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歴史と女性たちに翻弄された天才 『ラフマニノフ ある愛の調べ』 [2008年04月19日(土)]
 
今日から公開の『ラフマニノフ ある愛の調べ』。



ラフマニノフって、ロシアの作曲家であること以外、本人についてはほぼ何の知識もなかったんですが、この映画、楽しめました。
クラシックファン向けの“音楽映画”というよりは「歴史と女性たちに翻弄された天才ラフマニノフと、その妻」というテーマの“恋愛映画”といったほうが、近いんじゃないかなと思います。

冒頭はNYのシーン。ロシア革命から逃れてきたラフマニノフが、カーネギー・ホールでの演奏会で大成功を収める。で、それを機にアメリカ国内を延々ツアーでまわっていくことになります。

彼の演奏はどこでも熱狂的に迎えられるし、待遇も悪くない(列車で移動するのですが、彼らが乗っているのはピアノつきの豪華なサロンのような特別車輌)。でも、本人は日に日に憔悴して、弾けないし、曲も書けない状態に陥ってしまう。

常に不機嫌でイライラしているので、そういう人ってこと?と思って観ていると、回想シーンに変わり、ロシアの時代に若き天才ピアニストとしての才能を認められ、大恋愛も経験するという、演奏家としても作曲家としても華やかで自信に満ちていた時代が描かれる。



その当時のロシアのシーンがどれも本当にきれい。ライラックの森や美しい庭園のあるお屋敷が登場し、女性たちは美しく野生的。こういう環境にいたからこそ、優雅でロマンティックな名曲が生まれたんだなあと思えます。それだけに、その後、ロシア革命の恐怖を経験して、国を捨ててアメリカに逃げてきた彼が、作曲できずに苦しむのは当然といえば当然。

結局、天才が天才として輝くには、いろんな条件が必要なんですね。ラフマニノフの場合は環境もそうですが、女たちの影響、そして妻の腹のくくり方が大きかったようです。アーティストの妻って、本当に大変……。

もちろんラフマニノフの曲も流れます。
恋愛と歴史と音楽がいいバランスで入っている作品。デート向きです!

『ラフマニノフ ある愛の調べ』
監督:パーヴェル・ルンギン
出演:エフゲニー・ツィガノフ
Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマほか全国公開中
(C) 2007 THEMA PRODUCTION JSC (C) 2007 VGTRK ALL RIGHTS RESERVED

絢爛豪華なセットで繰り広げられる、ドロドロの愛憎劇 『王妃の紋章』 [2008年04月15日(火)]
 

もう公開されていますが『王妃の紋章』、すごい映画です。何がすごいかというと、その豪華絢爛なセットと衣装。「瑠璃」という光る柱が使われた宮廷内は七色に輝いていたし、金糸をふんだんに使った衣装はどれも豪華で、全編まばゆいほどにキラキラした世界です。登場する女官やら兵士やら王に仕える人数もとにかく多い。なにせ製作費は50億円! ケタ違いにお金のかかった映画です。

王家のファミリー。衣装がキラキラです。ピンクに光っている柱が瑠璃。この柱がズラリと並んだシーンも圧巻です。
 
ストーリーは中国史上、最も華やかな唐王朝滅亡後の時代を舞台に、宮廷で繰り広げられる愛憎劇を描いています。王と王妃の間は冷え切っていて、王妃は隠れて継子の皇太子と関係を持っていたり、王が王妃の健康のために毎日運んでくる「薬」が、実は「毒薬」だったりと、ドロドロした関係がつぎつぎに明らかになる……。

かなり人間関係はぐちゃぐちゃですが、話自体はとてもわかりやすいので、ちょっと昼のメロドラマを観るような感覚に近いかも。ちょっとあり得ないストーリーですけど、ハマるとスーッと入るこめて楽しめます。特に王妃役のコン・リーの演技が圧巻。毒と知りつつ薬を飲み続けながら、取り憑かれたように菊の刺繍を続けるようすは、狂気を帯びていてゾッとしました。

次第にカラダに毒が回りながらも毅然とした態度。コン・リーが王妃を熱演!

監督は、北京オリンピックの開会式・閉会式の総合プロデューサーを務めることになったチャン・イーモウ。前作の『HERO』『LOVERS』でも、戦闘シーンで広場に数えきれないほどの兵士がズラーッと並んで矢を放つ、といった壮大なシーンがありますが、この作品もしかり。しかも今回、広場には菊の花が敷き詰められていて、戦いが終わったあとは、あっという間に菊が新しいものに置き換えられていく。そういう描写にも王の権力の強大さが出ていたと思います。

戦闘シーンで言えば、忍者部隊に注目です。突然シュルシュルーっと現れて、動きがすばしっこい。登場シーンでは毎回意表を突かれるので、コワいんですけど面白い。アクション映画としても楽しめました。

『王妃の紋章』
監督・脚本:チャン・イーモウ
出演:チョウ・ユンファ、コン・リー、リウ・イエ、ジェイ・チョウ、リー・マン
東劇ほか全国公開中
(C)Film Partner International Inc.

最後までドッキドキの展開 『フィクサー』 [2008年04月08日(火)]
 
今年のアカデミー賞の作品賞ほかにノミネートされた作品。監督は『ボーン・アイデンティティー』シリーズのトニー・ギルロイ。ボーンシリーズも、息をつかせぬ展開にドキドキでしたが、『フィクサー』もそう。最初は何が起きているのかわからず緊張の連続ですが、ラストに向かってクリアになっていく。時間をさかのぼったり、相手側の立場からのシーンを入れたりして、だんだん全体像がつかめていく過程はかなり快感です。



ただし、扱っているテーマは「ボーン」よりリアル。巨額な薬害訴訟を抱えている巨大製薬会社がNY最大の法律事務所と契約して訴訟を有利に進め、いよいよ解決という段階になって、担当の弁護士が良心の呵責から、ある事実の暴露を決意する。その動きを察知した事務所側が社内のフィクサー(もみけし屋)に事態を収拾させる、というストーリー。

製薬会社の法務部長(ティルダ・スウィントン)、事実の暴露を決意した弁護士(トム・ウィルキンソン)、フィクサー(ジョージ・クルーニー)の3人の駆け引きがメインになるのですが、それぞれに精神状態がギリギリ。

なかでも印象的だったのが、ティルダ・スウィントンが演じる企業の法務部長。訴訟に負けたら3000億円の損出という立場に立たされ、最近部長になったばかりの彼女としては、絶対に失敗できないし、女がどこまでできるか的な意地悪な視線も感じたりして、そのプレッシャーたるや、常に脇汗びっしょり、なのです。

悪い人なんだけど、つい同情したくなってしまう。ピリピリ具合が尋常じゃない法務部長。この役で、ティルダ・スウィントンはアカデミー賞助演女優賞を受賞。

役柄的には悪い人なんですけど、ストレスとプレッシャーでおかしくなりそうな彼女を観ているとつい感情移入してしまう。この演技で、彼女はアカデミー賞の助演女優賞を受賞したのですが、それも納得です。

ジョージ・クルーニーが演じるフィクサー役も、社内では日陰の存在で出世できないうえに、従兄弟の莫大な借金を肩代わりしてイライラしているし、この映画の登場人物はみなどこか病んでます。で、実際にこういう世界って普通にありそうなところが恐ろしい。

大企業が腐敗しきっていたり、登場人物がストレスでどんどん病んでいく姿に批判的なメッセージがこめられつつも、ギリギリの状態にいる人たちだからこそ、とんでもない駆け引きになって、サスペンスとしても面白い。最後の最後まで、目が離せません!

『フィクサー』
監督・脚本:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー、ティルダ・スウィントン、トム・ウィルキンソン、シドニー・ポラック
4月12日より、日比谷・みゆき座ほかTOHO系で全国ロードショー
(c)2007 Clayton Productions, LLC

浅野忠信さんのチンギス・ハーン、カッコいい! 『モンゴル』 [2008年04月02日(水)]
 
今日ご紹介するのは『モンゴル』。今年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたことで、主演の浅野忠信さんの現地入りが話題になっていた、あの作品です。

曲がった剣とか弓矢とか。武器はどれも大ぶりで戦闘シーンは激しく痛そうでした…。

浅野さんが主演ではあるものの、ドイツ、ロシア、カザフスタン、モンゴルの4カ国合作の作品で、監督は、ロシアのセルゲイ・ボロドフ。映画は全編モンゴル語。浅野さんはキャストでただひとりの日本人。しかもチンギス・ハーン役。主演です。

チンギス・ハーンを演じるのにふさわしいアジア系の俳優を探し回った監督が、ぜひ出てほしいとオファーをしたことがきっかけで、浅野さんは単身で中国に乗り込んだのだそう。実はこの映画、浅野さんが出演しているとはいえ日本での公開は未定で、今回のアカデミー賞ノミネートを受けて急遽公開が決まったといういきさつがあるのだとか。観終わって、日本で公開が決まって本当に良かったと思いました。浅野さん、本当に素敵なんです!

素敵といっても、普段の浅野さんから連想されるオシャレで洗練された感じからはほど遠く、ヒゲも髪もぼうぼう。冒頭の囚われのシーンでは、石化しているのでは?っていうくらいに肌もガビガビ。でも、それがテムジン(チンギス・ハーン)の荒々しさとカリスマ性を伝えていて、カッコいいと思えてしまうんです。

この映画のCMやポスターでは、恐そうな戦闘シーンが多いし、チンギス・ハーンって世界を征服した恐い人のイメージがあるので、浅野さんの話題以外ではあまり食指が動かないかもしれませんが(というか、私がそう…)、私はこの映画、壮大な恋愛ドラマとして観ました。子どもの頃に運命的な出会いをした2人が、どんなに仲を引き裂かれても互いを求め合う。テムジンも強いけれど、妻のボルテもそれを上回るくらいに屈強で、彼女の存在があったからこそテムジンは成功したんだということがよくわかる。演じるモンゴル人の女優さんもキリリとしていて魅力的です。

この夫婦、本当にタフ。妻あってのチンギス・ハーンってところもいいんです。

モンゴルの広々とした草原や乾いた土の感じも、映画の雰囲気を盛り上げていますが、あんなに何もない大自然の中で撮影をしたんだと思うと、撮影チームの中に単身で乗り込んで歴史上の大人物を演じたという浅野さんの挑戦が、改めてカッコいいなーと思える。
いろんな意味で元気になれる作品です。

『モンゴル』
監督:セルゲイ・ボドロフ
出演:浅野忠信
4月5日(土)より丸の内TOEI 1、新宿バルト9他にて全国ロードショー
(c) 2007 CTB FILM COMPANY/ANDREYEVSKY FLAG FILM COMPANY/X FILMECREATIVE POOL/KINOFABRIKA/EURASIA FILM.ALL RIGHTS RESERVED.

ウォン・カーウァイの映像美を堪能! 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』 [2008年03月26日(水)]
 
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』。もう公開が始まっていますが、ウォン・カーウァイ監督が初めてアメリカを舞台に英語で撮った作品です。ウォン・カーウァイといえば、私は『花様年華』と『ブエノスアイレス』がすごく好きですが、どのシーンを切り取っても映像が美しいと思える監督。特に赤・黒・ブルーが独特でキレイだなあといつも思います。



今回は舞台もキャストもアジアの要素はゼロなので、かなりいつもと雰囲気が変わるのでは?と思っていたのですが、それでもウォン・カーウァイっぽい。どこを切り取ってもやっぱり絵になる美しさなのです。公開直前に「めざましテレビ」で、来日したウォン・カーウァイ監督にオリジナル映像を撮ってもらうという企画があって、ショーケースに入ったパイをほんの十数秒の映像にまとめていましたが、それだけでも十分に「らしさ」が出てました。パイにクリームがトロリと流れる感じとか、本編にもありますけど、すごく素敵です。

物語のほうは、失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)が、元恋人の家の向かいにあるダイナーに彼を探しに来るところから始まります。失恋のショックに苦しむエリザベスに毎晩ブルーベリーパイを用意してくれるオーナーのジェレミー(ジュード・ロウ)。彼と話すことで、少しずつ慰められていくエリザベス。でも、どうしても終わった恋を引きずってしまう彼女は旅に出ることを決心。そこから長い旅が始まる、という展開に。

グラミー賞シンガーのノラ・ジョーンズが映画初出演、初主演ということでも話題になっていますが、他の出演者との間にまったく違和感なし。というか、すごくスクリーン映えする存在感がありました。子どもっぽく見えたり、すごくセクシーに見えたりと、シーンごとにまったく別の顔になるところも不思議。そして、これは私だけかもしれませんが、アンジェリーナ・ジョリーそっくりに見える瞬間が何度かありました。どうなんだろう、チェックしてみてください。



ジュード・ロウがダイナーの主人という役はちょっと意外な気もしましたが、どこにでもありそうな店の主人という「誰にでも手が届きそうな存在」にジュード・ロウだなんて、思わず妄想したくなるうれしい設定♪ ウォン・カーウァイ監督、わかっていらっしゃいます。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズ、エド・ハリス
日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開中
(c)Block 2 PICTURES 2006

ディズニー映画をディズニーがパロディ!? 『魔法にかけられて』 [2008年03月09日(日)]
 
ディズニーのおとぎ話に出てくる、夢見るプリンセスが、現代のニューヨークにやってきたらどうなるか、というのが、この映画。ヒラヒラのドレスも、オトメな言葉遣いももちろん通じず、気味の悪い不思議ちゃん扱い。やさしい笑顔でかわいそうなホームレスのおじさんに声をかければ、ティアラを取って逃げられる、と散々な目に遭ってしまうプリンセス。



こんな大胆なストーリーを作っちゃって大丈夫? とまず心配になりますが、ディズニーをパロディにしているのは本家のディズニー。よくぞやりました、って感じの潔さです。

なかでもキョーレツだったのが、プリンセスが動物たちを呼び寄せるシーン。おとぎ話の世界ではウサギにリスにクマたちが集合ってところですが、現代版では、ニューヨーク中のハトとネズミとゴキブリたちが集まってくるんです。おぞましすぎる光景ですが、プリンセスは彼らを笑顔で迎え、歌いながら一緒にお掃除。すごい!これが正真正銘のプリンセスってことなんだ、と恐れ入りました。

おとぎの世界から現代に迷い込み、途方に暮れていたところを、弁護士のロバートに助けられたプリンセスのジゼル。前半はとにかくジゼルのお姫様的な行動が浮きまくって、笑えるシーンばかりですが、しだいに彼女の魅力が周囲に受け入れられるようになっていく。後半は、ディズニー映画らしいロマンティックな展開が、ちゃんと用意されています。



ジゼル役のエイミー・アダムスもプリンス役のジェームズ・マースデンも、現実社会から浮きまくったクサーい演技が光ってましたが、圧巻なのは魔女役のスーザン・サランドン。子どもが見たら泣き出すくらい、魔女メイクがカンペキで迫力ありました。

うっとりできるし笑えるしで、本当に楽しい映画です。ディズニー映画だと照れてしまう彼でも、これは楽しめるはず。デートにもおススメです。

『魔法にかけられて』
監督:ケヴィン・リマ
出演:エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、スーザン・サランドン
3月14日より日劇3ほか全国ロードショー
(c) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

スタイリッシュなゆるゆる映画『ダージリン急行』 [2008年03月08日(土)]
 
今日から公開の『ダージリン急行』。監督は、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』のウェス・アンダーソン。どちらにも共通するのは、ユーモアのあるスタイリッシュなゆるさみたいなものかな、と思うのですが、この作品もやはりウェス・アンダーソンらしい。「いい話」をベタにせず、オシャレーな感じに描いてます。



父親の死をきっかけに疎遠になっていた3兄弟が、長男の呼びかけで1年ぶりに再会、インドを横断する列車の旅に出るというストーリー。旅の前半、列車の中でドタバタ事件ばかり起こす3人。いいオトナが揃って何やってんだか、って感じで笑っちゃうのですが、どこかお互いに警戒し合ってもいる。相手にパスポートは預けたくない、みたいな感じで。それが途中、列車を降りてインドの人たちに出会うシーンから、雰囲気がガラリと変わって急に哲学的になっていくのが面白い。

で、彼らの過去の話を交えながら、3人の関係性が変わっていく。バラバラに見えていた3人が(顔も全然違うんですけど)すごく兄弟っぽくなる。でも、しんみりとはせず、あくまでもさわやか。



冒頭で次男役のエイドリアン・ブロディが列車に乗り込むシーンや、途中にでてくるインドの村で葬式に参列するシーンで、いきなりプロモーションビデオっぽくスローモーションになるんですが、それがすっごくカッコよくて。ストーリーとはあまり関係ないんですけど、一番覚えているシーンです。

アニマル柄の3人の旅行バッグもかわいいなーと思って見ていたら、ルイ・ヴィトンがこの映画のために作った特注品なのだそう。列車から放り投げられたり砂漠を引きずられたりと、ものすごく雑に扱われてましたが、ビクともしていない。さすが。

『ダージリン急行』
監督:ウェス・アンダーソン
出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン
シャンテ シネほか全国ロードショー
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX

いい子じゃないヒロインが魅力! 『ライラの冒険/黄金の羅針盤』 [2008年02月24日(日)]
 
今週末先行ロードショーで観たかたもいるかもしれませんね。『ライラの冒険/黄金の羅針盤』は、イギリスのファンタジー小説「ライラの冒険」3部作の映画化第1弾。舞台は、人々が“ダイモン”と呼ばれる動物の形をした分身とともに生きるパラレルワールド。親友ロジャーを何者かに連れ去られた少女ライラは、あらゆる物事の真実を示す“黄金の羅針盤”を手に、謎の組織の秘密があるという北の大地へ旅立つ、というストーリーです。

かわいい、というより勇ましいヒロイン、ライラ。

春休みの子ども向けファンタジー映画でしょ、と思って観ると、ぐいぐいと引き込まれます。まず、主役のライラに陰があって魅力的。ここに出ている画像だけだと、かわいらしいお嬢さんのイメージですが、我を通したり、大人を挑発したりと、強気なキャラなのです。ニコール・キッドマンが演じるコールター夫人が、超美人の悪役キャラなので、そちらについ目が行ってしまいますが、ライラもなかなかの策略家。ハリー・ポッターに出てくるかわいい生徒たちに比べると、もっと一匹狼的で勇ましい娘なのです。

そして、世界観が楽しい。登場人物はそれぞれ“ダイモン”と呼ばれる自分の伴侶の動物を連れている。最初は、ペット連れ、くらいにしか思わなかったのですが、ダイモンが痛い目に遭うと、本人も痛みを感じたりして、けっこうダイモンの存在が大きいってことがわかると興味もわいてくる。映画のサイトに行くと心理テスト的な「ダイモン判定」もやっているのでけっこう楽しめます。ちなみに、私のダイモンは、ジャッカルでThaleronという名前。名前までつけられると、愛着を感じたりして……。観ていないと何のことやら?だと思うのですが、映画を観たら絶対に調べたくなるはずです。

あとは、ライラがまたがっているクマがね、いいんですよ。彼はイオレク・バーニソンといって、鎧グマの国を追われたかつての王なんですけど、彼がライラを守るために国に帰って、闘うんです。ライラと出会うシーンでは、イオレクは昼から飲んだくれて、やさぐれている。そこがまず人間っぽくておかしい。で、強面のクマがズラーッと並んでいる、鎧グマの国という設定も面白い。イオレクと今のクマ王の決闘をクマたちが固唾を飲んで見守るシーンも、かなり「クマ萌え」な気持ちになりました。

クマがいっぱい。みんなコワイ顔してますが、よく観ると表情豊かでけっこうかわいい。

残念なのは、大作の宿命として続編を待たなければいけないところ、ですね。続きが気になります……。

『ライラの冒険/黄金の羅針盤』
監督・脚本:クリス・ワイツ
原作:フィリップ・プルマン
出演:ダコタ・ブルー・リチャーズ、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、サム・エリオット
3月1日より 丸の内ピカデリー1ほか、全国松竹・東急系にてロードショー
TM &(c) MMVII NEW LINE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

女性陣が美しかった… 『潜水服は蝶の夢を見る』 [2008年02月12日(火)]
 
(c) Pathe Renn Production-France 3

もう公開は始まっているので、観た方もいらっしゃるかもしれませんね。
この映画は、フランスの雑誌ELLEの編集長、ジャン・ドニミク・ボビーが体験した実話をもとに作られています。仕事でも家庭でも人生を謳歌していた彼は、ある日突然脳梗塞で倒れ、左目の視覚と聴覚以外のすべての感覚がマヒしてしまう。そんななか、唯一動く左目の20万回以上の瞬きで、自伝を書き上げるというストーリーです。

映画の前半は、彼の左目を通して映画が語られるスタイル。だから、彼が瞬きをすると、画面も一瞬暗くなる。それで、思考はしっかりしているのに外界とコミュニケーションすることができない焦りや苛立ちが伝わってきて、自然と引き込まれていく。これは斬新でした。

何の前触れもなく、ある日突然体が動かなくなるという病気はショッキングだし、唯一動く左目を使って、瞬き20万回で本を書き上げたという精神力は本当に驚くべきものだと思う(その瞬きを書き留める作業に最後まで付き合った言語療法士さんも相当すごいです)。でもこの映画は彼のことを、かわいそうな人とか、偉大な人といった描き方はしていなくて、体が動かなくなって、たとえばそれが、潜水服の中に閉じ込められたような状態でも、記憶と想像力で自由に飛び回れるんだ、という姿を描いている。それが、『潜水服は蝶の夢を見る』というタイトルにもつながるわけなんですね。

ところで。全体を通して私が一番印象に残ったのは、奥さんや言語療法士、愛人など、出てくる女性たちの美しさ。そんなに有名なキャストは出ていないし、着ているものも白衣やごくふつうのワンピース。なのに、それが断然美しく、そしてセクシーに見えるのはなぜ? やっぱりフランス女性だから? とまとめてしまってよいものか…。少なくともこの映画の女性陣はバツグンに輝いておりました!

この美しい言語療法士さんが手に持っているのは、彼女が開発した、使用頻度順に並べ替えられたアルファベットの表。順に読み上げていって、言いたい文字が来たところで瞬きをする、というやり方で文章を綴っていくという仕組み。気が遠くなるような作業!

『潜水服は蝶の夢を見る』
監督:ジュリアン・シュナーベル
出演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ
渋谷シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目ほかにて公開中

イスラエル発の心温まる作品 『ジェリーフィッシュ』 [2008年02月08日(金)]
 
3月公開の作品ですが、ちょっと早めにご紹介を。
昨年のカンヌ映画祭でカメラドールを受賞したイスラエルの映画『ジェリーフィッシュ』。監督は人気作家でもあるエトガー・ケレットとシーラ・ゲフェン。イスラエルの映画と聞くと、ついエキゾチックな街並みや宗教色のある題材をイメージしがちですが、この映画には、そういうイスラエルっぽさはまったくといっていいほどありません。どこかヨーロッパの街といわれてもまったく違和感がないくらい。それがイスラエル(というか、テルアビブ)のいまの姿ってことなんでしょう。

これは、ひとつ目の話、バティアと不思議な少女。ストーリーには直接関係ないのですが、パーティ会場で、少女はかわいいいたずらをしています。その内容は…ウェディングケーキに関係あり。よーくチェックしてみてください!
(c) 2007 - Les Films du Poisson / Lama Productions LTD / ARTE France
Cinema


映画は、3つのストーリーが交錯しています。ひとつ目は、結婚式場で働く若い女性バティアの話。有名人の母とも、若い恋人を持つ父とも距離を感じているバティアは、ある日、何もしゃべらない不思議な女の子に海辺で出会い、週末だけ預かることになる。

2つ目は、花嫁のケレンの話。結婚披露宴の最中に骨折した彼女は、新婚旅行を諦めてテルアビブ市内のホテルに泊まることに。そこで花婿が謎めいた女性に出会い、夫婦の間にはギクシャクした空気が流れる。

3つ目は、フィリピンから出稼ぎに来たジョイの話。彼女は一人暮らしで気難しい老女マルカのヘルパーとして働きながら、国に置いてきた息子にプレゼントを買おうと貯金を始める。

3つに共通するのは、登場人物もその周囲のひとたちも、自分の気持ちをうまく伝えられず、孤独感を抱えて生きていること。それがちょっとした出会いや事件から、少しだけ状況が変わって、希望を感じるラストに向かう。ドラマティックな展開はありませんが、やさしい気持ちになって終われるはずです。

映像がきれいなのも特徴。特に、海や水のイメージが効果的に使われていて、すごくきれいです。まず冒頭のシーンはちょっと意表を突かれますが、一応「海」。バティアの部屋が水漏れして床が海のようになっていたり、天井から滴る水を飲むシーンもいい。海辺のアイスクリーム売りのおじさんのシーンも、淡い色使いがとてもきれいで。なんというか、もし時間が経ってストーリーを忘れてしまったとしても、その映像だけはずーっと覚えていられるような、幻想的な美しさがあるんです。

登場人物で言えば、写真にも出ていますが、浮き輪をつけた女の子。この子がほんとうにかわいいんです! セリフのない謎めいた存在ですが、いちばん印象的なのは、夜ベッドに入るからとおなかの浮き輪を外そうとすると「アーッ」っていう叫び声を上げて手で制するシーン。観た人どうしでしばらくブームになるくらい、強烈です。で、仕方なく浮き輪をした上からブランケットをかけるんですけど、それがまた、ちょっとヘンでかわいい。

セリフはないけど、目ヂカラが強くて、不思議な存在感がある。ニコール・レイドマンちゃん、初出演だそうですが、この作品を機にいくつものCMの仕事が来たのだそう。観たら納得です。

この作品、試写会のプレゼントを実施中のようですので、このチャンスをお見逃しなく! 11日締め切りなので、まだのかたはお急ぎを。
少し前に、監督にインタビューもしました。映画のイメージとかぶるような、静かで優しげな方だったのが印象的。そちらもまもなく登場しますので、お楽しみにー。

『ジェリーフィッシュ』
監督:エトガー・ケレット、シーラ・ゲフェン
出演:サラ・アドラー、ニコル・ライドマン、ゲラ・サンドラー、ノア・ノラー
3月15日より渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー

プロフィール
プロフィール
ミヤモトヒロミ。ライター。映画やカルチャー関連の記事をウェブサイトや女性誌などで執筆。
号泣モノから爆笑ストーリー、胸キュン恋愛ものまで、忙しくても絶対劇場で観たい!と思える映画を厳選してご紹介します!
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