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ショッキングな中国の現状。でもヒトゴトじゃない! 『いま ここにある風景』 [2008年06月17日(火)]
 
(c)EDWARD BURTYNSKY

ずらーっと奥まで並んだ黄色い制服の工員たち。よーく見るとグループに別れてリーダーからの指示を仰いでいるようす。これは中国のとある巨大工場の敷地内でのカット。
この写真を撮ったのは、カナダ人の写真家、エドワード・バーティンスキー氏。

このかた、20年にわたって、世界中の産業風景を撮り続けているんです。来月公開される映画『いまここにある風景』は、彼がここ数年、中国を訪れてその産業の姿を撮った作品を集めたドキュメンタリー。

観るとまず、中国の産業がいま、すごいことになってるってことにびっくり。上記の巨大工場もそうだし、13の町を沈めたという巨大ダムや、見渡す限りの石炭の山、世界中から運び込まれる、有害物質を含んだ廃棄パソコンの部品の山……。そのひとつひとつがあまりに巨大すぎて呆然としてしまう。直視するのがコワくて、思わず目を逸らしてしまいます。

ダムに沈む予定の町で、自分たちが住んでいた建物を壊す労働者たち。
(c)EDWARD BURTYNSKY

まず湧き起こった感情は、驚きと怒り。中国、これはまずいんじゃないの? ちょっとやりすぎでしょう?と。で、次は恐怖。こんな規模で中国が発展し続けたらほんとに地球の資源なんてあっという間に枯渇してしまうと。

でも、少し冷静に考えてみると、結局中国に最初に工場を作ったのは日本やほかの先進国の企業で、そこで作られる安い電化製品を買ったり、廃棄されたパソコンを輸出したりと、今だって日本は深く関わっているわけで。そうすると、スクリーンの風景は全然ヒトゴトじゃない!ってこと。

中国がいま、コワいことをしているのは事実。でも、電化製品を次々に買い換えるような生活を続ける人たちがいる限り、結局、中国の産業の加速化を支え、有害物質を押し付けていることになってしまうんですよね。

映画は全体を通して、産業の風景を淡々と映していくだけなのですが、最後に語られたバーティンスキー氏の「人間は一度手に入れたものを手放すことができず、しかし同時に、そのことが問題を深刻化していることも知っているから、居心地の悪さを感じている」という言葉がずしりと響きました。それに対して「良いとか悪いとかの問題じゃなく、全く新しい発想が必要だ」ということについても。

ショッキングですが、とてもとても考えさせられる映画です。

で、エドワード・バーティンスキー氏が来日した会見に参加したので、そのようすは次回。

『いま ここにある風景』
7月12日より東京都写真美術館ホール、シアターイメージフォーラムほか、全国順次ロードショー!

GW、おすすめ映画いろいろ [2008年04月30日(水)]
 
GWですね。今年は暦通りだとちょっと少ないですが、平日をつなげて11連休にする方もいるとか。それはうらやましい。
毎日天気もいいので、映画の気分じゃないかも、ですが…(私もつい、更新せずに何日も経過)、この連休中におすすめの映画をいくつかご紹介します。

まずは、先週公開になった、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。主演のダニエル・デイ・ルイスが今年のアカデミー賞で主演男優賞を受賞。作品賞にもノミネートされて、最後まで本命視された作品です。



ヒトコトで言えば、男の執念の一代記。無一文から油田を掘り当て、富を手にしてのし上がっていく男の人生を描いています。冒頭に、何もない荒涼とした土地で、ひとりきりで黙々と穴を掘り続けるシーンがあって、そこからすでに主人公のプレインビューがタダ者ではない感じが伝わってきます。その後彼は石油を掘り当て、巨万の富を手にすることになるのですが、才能があったとかラッキーだったとか、そういうスマートさはまったくなく、手段を選ばずに欲望を形にしていく。執念の力を見せ付けられる感じがします。

特に、彼の宿敵ともいうべき若き伝道師イーライとのやりとりは見もの。
強欲さのカタマリ、のような2人にはなかなか感情移入もしにくいのですが、観ているうちに、強欲、結構じゃないの? なんて刺激されるような気もする、ちょっとコワい映画です。

そしてこの映画、時間が158分だったり重厚なテーマだったりで、観終わるとかなりぐったりくるのも事実。そのあと大きな予定が入っている日は厳しいかもしれません。観るなら、メインイベントにして行くべし、です。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
監督・製作・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ディロン・フレイジャー、ポール・ダノ
(C) 2007 by PARAMOUNT VANTAGE, a Division of PARAMOUNT PICTURES and MIRAMAX FILM CORP. All Rights Reserved.

もう1本は『パーク アンド ラブホテル』



タイトルにあるとおりなのですが、舞台となる裏ぶれたラブホテルの屋上に小さな公園があって、老人や子供がそこで憩っている。その設定にまず惹かれます。
ホテルのオーナーは、無愛想な女性。演じているのはリリィさん。すみません、私は映画を観るまでリリィさんのこと、よく知らなかったのですが、とても素敵です。

毎朝ホテルの前をジョギングで通って、オーナーに挨拶している主婦が、ホテルでバイトさせて欲しいと頼むシーンがあるんですが、バイトに雇ってからは、それまでいつも感じよく挨拶していたオーナーが急にぶっきらぼうになる。それが、意地悪ではなくて、「身内だからこその無愛想な感じ」になっている。どこか突き放しつつ、ちゃんと見ていてくれる。こういう人がいたら、コワいけど関ってみたくなる。そういう意味で、オーナーと関わる女性たちの気持ちは共感できる気がします。

この映画は、「ぴあフィルムフェスティバル」のスカラシップ作品。過去には、『かもめ食堂』の荻上直子さんや、『運命じゃない人』の内田けんじさん、もうすぐ公開される『ぐるりのこと』の橋口亮輔さんもこのPFFスカラシップでデビューしているという、日本の若手監督の登竜門的な制度。注目の若手監督という意味でも、要チェックの作品です。

『パーク アンド ラブホテル』
監督:熊坂出
出演:りりィ、梶原ひかり、ちはる、神農幸、津田寛治、光石研
(C)PFFパートナーズ

そして、GWといえば、毎年恒例のイタリア映画祭もあります。明日から開催なので、開会式に参加できたらリポートしますね♪

ヒロインだけがしっかり者 『4ヶ月、3週と2日』 [2008年03月04日(火)]
 
1987年、チャウシェスク大統領による独裁政権末期のルーマニアを舞台に、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶を手助けするヒロインの1日を描いた作品。昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品です。

(C)Mobra films 2007

中絶に対する考え方は、国によっても宗教によっても違うと思うのですが、当時のルーマニアでは、女性は最低3人の子どもを生むようにいわれ、45歳に満たない女性は4人生むまで中絶は禁止、中学生にも出産が奨励されたのだそう。職場には妊娠をチェックする係りがいて、生理が止まったものに対しては確実に出産したかどうか調査されたのがそう。労働力を確保するためということですが、食料事情も悪く、かえって孤児や捨て子が大量に発生することになったのだとか。これは相当コワい社会……。

で、その背景を考えると、ルームメイトの中絶に協力するなんて、きわめて危険なこと。病院では無理だから、ホテルの一室で、しかも違法と知った上で協力してくれる医者を探さなければならないわけで。

ヒロインはこの計画に協力するために、ボーイフレンドからお金を借り、ホテルの予約を確認し、医者を迎えに行き、と、朝から分刻みで動き回る。ところが妊娠した友人はといえば、実はホテルは予約できておらず、用意すべきビニールシートは忘れたのに、手作りのお菓子は準備してくるような能天気キャラ。ちょっとキミ! コトの重大さをわかってんの? とヒロインならずとも突っ込みたくなってしまう。

この映画は、ヒロインの視点で話が進んでいくので、すっと話に入っていけるし、彼女は感情移入しやすいキャラクター。だからこそ、周囲の人たちにイラッとさせられる様子がダイレクトに伝わってきます。

忙しいって言っているのに、母親の誕生日パーティに無理やり来させた挙句、親の前で彼女をフォローしないボーイフレンドとか、心配だから電話を枕元において置くように言ったのに、うるさいからとバスルームに入れてしまう友人とか、観ているだけでも拳に力が入ってキーッとなってくる。ヒロインがいつキレるんだろうかとドキドキするくらい、みんな身勝手。あまりにいろんなことが起きて振り回されるので、映画が終わるころにはぐったりしてしまうかも。

それにしてもこのヒロインはすごい! トラブルが起きても、何とかしようと行動してくれる。彼女の肝の据わりかたが、この映画を魅力的にしているんだと思います。


『4ヶ月、3週と2日』
監督:クリスティアン・ムンジウ 
出演:アナマリア・マリンカ 
銀座テアトルシネマ他全国順次公開中

ブラピと気軽に呼べない、ブラッド・ピットが主演 『ジェシー・ジェームズの暗殺』 [2008年01月09日(水)]
 
仕事始めで、「今年もよろしく」なんて数日前まで言っていたはずなのに、気がつけばすっかり通常のお仕事モードに突入。…ではないですか? 

今日はジョニー・デップの来日記者会見に行ってまいりました。
今年最初の記者会見だったのですが、ものすごい数の報道陣に圧倒され、ものすごい数のフラッシュが周りで光るのでデジカメのピントが合わず、かなり焦りました。でも、プロのカメラマンのかたがた方はまったく動じずに撮影されていて、力の差を痛感…。すっかり休みボケも飛びました。

と、これだけ振っておきながら、今日ご紹介するのは『ジェシー・ジェームズの暗殺』。主演はブラッド・ピットです。ややこしくて、すみません! こちらのほうが先に公開されるもので。ジョニー・デップはもう少しお待ちください…。

草原にたたずむジェシー・ジェームズ。とても美しいシーンですが、ジェシーの目がコワくて、タダ者じゃないことが伝わってきます。
(C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ジェシー・ジェームズというのは、アメリカの西部開拓時代の有名な無法者。ビリー・ザ・キッドと並ぶ存在ともありましたが、実は私はこの映画で初めて名前を聞きました。でも、この映画は彼のことを知らなくても問題なく楽しめるはず。ジェシー・ジェームズ役のブラッド・ピットの演技で、十分に彼のカリスマ性が伝わってきました。

この映画のメインとなるのは、カリスマ的な存在のジェシーと、彼を慕う野心家の若者、ロバート・フォードとの関係。幼いころからジェシーに憧れ、崇拝してきたロバートは、いつか彼のようになりたいと思ってジェシーに近づき、彼に気に入られて行動をともにするようになる。最初はジェシーに感じていた尊敬や愛が、絶対に彼を越えられないと悟ってから複雑に変わっていく、という感情の動きにドキドキさせられます。演じるケイシー・アフレックの、大胆なのに小者感が漂う感じもよかった。


でも、何よりドキドキさせられるのはブラッド・ピットが演じるジェシーの静かなコワさ。暴力的なシーンはそんなにないのですが、穏やかな中に常に狂気というか凄みがあって、顔は笑っているんだけど、次の瞬間は殺されるんじゃないかという不気味さがある。ブラッド・ピットって、こういう陰のある役がすごく似合う!というのは、ちょっとした発見でした。

西部劇とかカウボーイのアクションものを想像していくと、全然違って、これは心理戦をじっくり追って楽しむタイプの映画。160分とけっこう長いので、あまり軽いノリでは行かないほうがよさそう。デートにもいいけど、かなり渋め。この作品に関しては、気軽に「ブラピ」とは呼べない雰囲気ですよ。

『ジェシー・ジェームズの暗殺』
監督・脚本:アンドリュー・ドミニク
出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック
1月12日より丸の内プラゼールほか全国ロードショー

主演がブッシュ大統領!? 超問題作『大統領暗殺』 [2007年10月02日(火)]
 
この映画、タイトルの通り、ブッシュ大統領が暗殺されるという内容です。しかも、俳優を起用するのではなく、ブッシュ本人の映像に加工を加えて、あたかもドキュメンタリー映像のように撮られた作品。この宣伝用写真からして、ニュースサイトに載っていたら、絶対に信じてしまうくらいにリアル。かなり衝撃的ですよねー。

これが衝撃の暗殺シーン。映画だと知らなければ、絶対信じてしまう、決定的瞬間ですよね。

映画の内容は、今年の10月19日に、アメリカのシカゴで演説を終えた大統領が何者かの銃弾に倒れるという話。そして、その事件が国内にどんな影響を与えるのかが描かれていきます。

暗殺シーンはたしかに衝撃的。ただ、奇をてらったり、大統領に対する悪意から作られた映画ではないことが、観ているうちにわかってきます。もし、いまアメリカで大統領が暗殺されたら、大統領の周辺や政府はどう動くのか、メディアはどう伝えるのか、世論はどうなるのか、ということをシミュレーションして、そのひとつの例を説得力をもって観客に示している作品。実際、観終わって印象に残ったのは、ブッシュが殺されたということより、その後の顛末の怖さ。すごく説得力があって、実際にそういうことになるかもなあと思わされました。

ブッシュ大統領本人や家族に対しては、たしかに道徳に反したことをしているけれど、9.11以降のアメリカで「大統領」が殺されたらその後の世界はどう変わるか、ということをリアルに描くには、この方法は効果的だと思います。

この作品を撮ったのは、イギリス人のガブリエル・レンジ監督。アメリカでは上映館数が大幅に減らされ、日本でも当初のタイトル『ブッシュ暗殺』が映倫の指導で『大統領暗殺』に変更された問題作(でも『ブッシュ暗殺』というタイトルは、さすがに挑戦的すぎるような気がしますけど、どうなんでしょうか)、いよいよ今週末公開です。


『大統領暗殺』
監督・脚本・製作:ガブリエル・レンジ
出演:ジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェイニー
10月6日より、シャンテ シネほか全国ロードショー

中国の今の空気がここに! 『長江哀歌』 [2007年08月17日(金)]
 
明日から公開になる『長江哀歌』。
昨年のベネチア国際映画祭で、グランプリの金獅子賞を受賞した作品です。



舞台となるのは、中国・長江の三峡ダムの建設地。
このダムというのが、実際にいま建設中のもので、2009年に完成すると、貯水量も発電量も世界最大になるのだそう。

貯水量で言うと、日本最大の奥只見ダムの65.5倍! 
2倍とか3倍ならイメージもできますが、65倍って…。想像の域を越えてますよね。「万里の長城」に続く国家レベルのプロジェクトというので、とんでもない規模であることは確か。

このダム建設で、130万人以上の人たちが移住を強いられるというのも、規模の大きな話。さらに、三峡は、「三国志」の舞台であったり、山水画に描かれたような歴史のある土地なので、多くの遺跡がダムの底に沈むことになるわけで…。

ダム建設にまつわる話だけでも、ドキュメンタリー映画が何本も作られそうですが、この映画は、ドキュメンタリーではなく、ダムの完成とともに水没していく都市を舞台に、そこに生きる人々の物語を描いています。

16年前に別れた妻子に会うために、ダムに沈む街にやってきた炭鉱夫、サンミンは、日雇いのビルの解体作業で生計を立て、安宿で暮らしはじめる。そこで彼が出会うのは、チンピラの青年や、工場の事故で働けなくなった夫を支える宿の女主人など。

社会的には弱い立場の人ばかりですが、それぞれにたくましく生きている。いつもランニング姿のサンミンはじめ、カッコいい人は皆無ですが、かえってそれで親近感を覚えてしまうんですよねー。

最初はさえない無口なおっちゃんにしか見えなかった、サンミンの人生のドラマが、物語が進むにつれて少しずつ明らかになってきて、すごく感情移入しちゃいました。


『長江哀歌』(ちょうこうエレジー)
監督・脚本:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、ハン・サンミン
8月18日よりシャンテ シネ ほか全国順次ロードショー

忘れてはいけない『ヒロシマナガサキ』のこと [2007年08月08日(水)]
 
今日ご紹介するのは『ヒロシマナガサキ』。



今週はテレビでも、特集番組が組まれていたり
週末は『はだしのゲン』のドラマが放映されるなど、
戦争や原爆について考える機会が多い時期。
とはいえ、終戦からすでに62年が経過していて、身の回りには体験者がほとんどいない、ということも事実ですよね。

この映画は、渋谷にいる10代の女の子たちに、1945年8月6日に日本で何があったかを聞いても誰も答えられない、というエピソードから始まります。
日本人であれば当然知っている話ではなく、ほうっておくと、どんどん風化してしまう。そのことが、まずショックでした。

「ヒロシマ・ナガサキの事実を伝え、核の脅威を世界に知らしめる」ために、25年という歳月をかけ、500人以上の被爆者に取材をして、この作品を作ったのは、スティーヴン・オカザキ監督。日系三世のドキュメンタリー作家です。
14人の被爆者の証言と、爆撃に関与した4人のアメリカ人の証言を中心に構成されていますが、特徴的なのは、原爆の威力とか、政治的な背景、といった説明はほとんどなく、それぞれの個人的な体験を、淡々と紹介していること。

原爆のすさまじい威力を目撃してしまったこと。
戦後も、被爆者に対するひどい差別に苦しんできたこと。
アメリカから医師や研究者がやってきても、まったく治療をしてもらえずに、研究対象として扱われたこと。
ひとつひとつの体験から見えてくるのは、被爆によって経験した、肉体的にも精神的にも想像を絶する苦痛。

広島、長崎で何が起きて、それからの人生がどうなったのか。
音楽や再現シーンなどによる過度な演出はありませんが
被爆者の方々の静かな語り口が、忘れられません。

ヒロシマ・ナガサキを知らない世代がいることもショックでしたが
ヒロシマ・ナガサキについて、自分が知っているつもりでいたことが、実は、表層的な部分だけだったのかもしれない、ということもショック。

風化させてはいけないテーマだとあらためて思いました。


『ヒロシマナガサキ』
監督:スティーヴン・オカザキ
岩波ホールにて公開中

『インランド・エンパイア』公開で、裕木奈江さん凱旋帰国 [2007年08月03日(金)]
 
今日は、公開中のデヴィッド・リンチ監督の最新作『インランド・エンパイア』のためにロスから緊急凱旋帰国した、裕木奈江さんの舞台挨拶に行ってきました。



裕木奈江さんといえば、『北の国から』シリーズの、はかなげな役のイメージしか浮かばないのですが、その頃とはずい分変わって、強くたくましい印象。
彼女は、2004年にギリシャに留学。その後、アメリカに渡り、昨年公開の『硫黄島からの手紙』、本作品と立て続けに映画に出演しています。

記者会見は何年か振り、とのことで緊張しているようすでしたが、「アメリカでは、オーディションには落ちるのが日常ですから、悩んだり悲しんだりしていられません」ときっぱりコメントしていた彼女。今後は、中国人、アジア人の役にも挑戦したいと意欲的でした。

彼女の役は、ラストのほうに登場する、ホームレスの女の子。
長いセリフを延々としゃべり続ける、不思議ちゃん的なキャラクターを演じています。
彼女が出演しているのを知らなかった私は、この女優さん気になるなあと思って観ていたら、ん? 裕木奈江? こんなキレイな人だったっけ? と驚愕。
本人がキレイになったことに加えて、デヴィッド・リンチ監督の映像の中では、女性がみな魅力的に見えるという、リンチ・マジックの効果でしょうか!?

話を映画のほうに戻すと、
『インランド・エンパイア』は3時間という、とても長い作品です。



街の実力者と結婚して豪邸で暮らす女優ニッキー。彼女が女優としての再出発をかけて新作の映画に臨むところから話が始まります。実は、その映画というのは、未完に終わったポーランド映画のリメイクで、未完に終わった理由は、主演の2人が殺されたから…なのですが、しばらくたってから、ニッキーはそのことについて聞かされます…。

 と、このあたりまでは、付いていけたのですが、突然に「ウサギ人間」がリビングでくつろぐシーンがはさまれたり、ポーランドの映画のシーンが出てきたり。時間と空間がねじれてきて、途中からはストーリーを追うのはほぼ不可能になってしまいました。(私だけ、かもしれませんが…)
話を理解することを放棄して、自由に映画を観たらいいってことなのかもしれません。

ひとつ、私の提案としては、「まどろむような感じで観る」。
この映画は、ストーリーを追っても追えないので、うとうとしながら観るのがいいかも。脈絡なく場面が変わる映像は、本当に夢を観ているような錯覚を起こすほど。

ただし、ラストシーン近くになって突然、雰囲気がガラリと変わって明るくなります。ここは、観ているだけでワクワクして、気持ちが高揚してくるので、うとうともしていられない。
晴れやかで、豪華なラストシーンです。


インランド・エンパイア
監督:デヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ハリー・ディーン・スタントン、ジャスティン・セロー、カロリーナ・グルシュカ 、スコット・コフィ
恵比寿ガーデンシネマ、梅田ガーデンシネマにて公開中

『ブラインドサイト』 [2007年07月26日(木)]
 
今回ご紹介するのは『ブラインドサイト』。
目の見えない子どもたちが、エベレストを目指すというドキュメンタリーです。



昔からチベットでは、盲目の人は悪魔に取り憑かれていると考えられ、ひどい差別を受けてきました。
盲目のドイツ人女性のサブリエ・テンバーケンは、9年前にチベットに渡り、チベット初の盲人のための学校を設立します。

数年後、サブリエは、子どもたちを勇気づけるために、アメリカ人の登山家、エリックを学校に招きます。エリックは盲人として初めてエベレスト登頂に成功した登山家。彼は、子どもたちに登山を勧め、サブリエと子どもたちは、エリックとともにエベレストの北側にある、標高7000メートルの山、ラクパリを目指すことになるのです。

いきなりエベレスト登山とは大胆な…、と思いますよね?

母国ドイツで「盲目は障害ではなく個性だ」と教えられて育ったサブリエは、盲目だという理由で、自分から行動範囲を狭くするような考え方を子どもたちに持ってほしくなかった。エベレストは、チベット人にとっては、自国の中にあるとても身近な存在であり、みんながいつかは登ってみたいと考える山。だからこそ、チベットの盲目の子どもたちが挑戦することに、意味があると考えたのです。

実際に登ったのは、選ばれた6人の子どもたち。
ロッククライミングなどのハードなトレーニングを積んでいるシーンや、ステッキを使いながら実際に山に登っているシーン。
どうして目が見えないのに、こんなことができるの? と、思わずうなってしまいます。

観終わって心に残るのは、盲目の子どもたちのがんばる姿だけじゃない。
同じ目標をもって山頂を目指していたメンバーが、状況が厳しく過酷になっていく中で、それぞれの「山に登る」意味の違いを知ることになる。その葛藤が、そのまま描かれています。


『ブラインドサイト 〜小さな登山者たち〜』
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:サブリエ・テンバーケン、エリック・ヴァイエンマイヤー、ソナム・ブムツォ、ゲンゼン、ダチャン、キーラ、テンジン、タシ
シネマライズ、品川プリンスシネマ他、全国公開中

プロフィール
プロフィール
ミヤモトヒロミ。ライター。映画やカルチャー関連の記事をウェブサイトや女性誌などで執筆。
号泣モノから爆笑ストーリー、胸キュン恋愛ものまで、忙しくても絶対劇場で観たい!と思える映画を厳選してご紹介します!
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