ヒロインだけがしっかり者 『4ヶ月、3週と2日』 [2008年03月04日(火)]
|
1987年、チャウシェスク大統領による独裁政権末期のルーマニアを舞台に、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶を手助けするヒロインの1日を描いた作品。昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品です。
![]() 中絶に対する考え方は、国によっても宗教によっても違うと思うのですが、当時のルーマニアでは、女性は最低3人の子どもを生むようにいわれ、45歳に満たない女性は4人生むまで中絶は禁止、中学生にも出産が奨励されたのだそう。職場には妊娠をチェックする係りがいて、生理が止まったものに対しては確実に出産したかどうか調査されたのがそう。労働力を確保するためということですが、食料事情も悪く、かえって孤児や捨て子が大量に発生することになったのだとか。これは相当コワい社会……。 で、その背景を考えると、ルームメイトの中絶に協力するなんて、きわめて危険なこと。病院では無理だから、ホテルの一室で、しかも違法と知った上で協力してくれる医者を探さなければならないわけで。 ヒロインはこの計画に協力するために、ボーイフレンドからお金を借り、ホテルの予約を確認し、医者を迎えに行き、と、朝から分刻みで動き回る。ところが妊娠した友人はといえば、実はホテルは予約できておらず、用意すべきビニールシートは忘れたのに、手作りのお菓子は準備してくるような能天気キャラ。ちょっとキミ! コトの重大さをわかってんの? とヒロインならずとも突っ込みたくなってしまう。 この映画は、ヒロインの視点で話が進んでいくので、すっと話に入っていけるし、彼女は感情移入しやすいキャラクター。だからこそ、周囲の人たちにイラッとさせられる様子がダイレクトに伝わってきます。 忙しいって言っているのに、母親の誕生日パーティに無理やり来させた挙句、親の前で彼女をフォローしないボーイフレンドとか、心配だから電話を枕元において置くように言ったのに、うるさいからとバスルームに入れてしまう友人とか、観ているだけでも拳に力が入ってキーッとなってくる。ヒロインがいつキレるんだろうかとドキドキするくらい、みんな身勝手。あまりにいろんなことが起きて振り回されるので、映画が終わるころにはぐったりしてしまうかも。 それにしてもこのヒロインはすごい! トラブルが起きても、何とかしようと行動してくれる。彼女の肝の据わりかたが、この映画を魅力的にしているんだと思います。 『4ヶ月、3週と2日』 監督:クリスティアン・ムンジウ 出演:アナマリア・マリンカ 銀座テアトルシネマ他全国順次公開中 |




