辛い現実に負けない母娘の愛に、涙。『サラエボの花』 [2007年11月28日(水)]
今日ご紹介する『サラエボの花』は、ボスニア紛争から10余年たったサラエボを舞台にした映画です。
シングルマザーのエスマは、12歳の娘サラとつつましく暮らしている。スポーツもケンカも強く男の子にも負けないサラの一番の楽しみは、もうすぐ出かける修学旅行。父親が戦死した殉教者なら、旅費が免除されるというのに、エスマはその証明書を出そうとしてくれない。自分の父親は殉死したと聞かされているのに。娘の怒りがしだいに募り、それが母にぶつけられたとき、2人の間の隠された真実が明らかになっていく…という話。
この映画を撮ったヤスミラ・ジュバニッチ監督は1974年生まれ。サラエボで生まれ育った彼女は、映画で描かれているボスニア・ヘルツェゴビナの内戦を実際に体験しています。92年に戦争が始まったときは、数学のテストがキャンセルになったことを無邪気に喜んでいた彼女も、徐々に戦争の恐ろしさを知ることになったそうです。
その最大のものが、戦争戦略として相手の女性に屈辱を与えるために、レイプされる女性が多数いたこと。戦争そのものよりも、そのことがショックだったという彼女は、戦争後もそのトピックについて調べ続けたのですが、監督自身が出産を経験して母性を実感し、今回の映画のアイディアが生まれたのだそうです。
この映画は、戦争が男だけのものではなく、女性たちにとってもどんなに深い傷を負わすかということを語っていますが、そのことだけにフォーカスしているわけではない。描かれているのは、戦争が終わってからの世界。過去の忌まわしい体験に深く傷ついている母親にとって、娘はその傷に一番近い存在。でも一方で、娘を何よりも深く愛する気持ちが彼女の生きる力にもなっているわけで。
娘が無邪気に父親のことを聞きたがることが、母親をどんどん追い詰めていく。娘は母を気遣いながらも、安心させてほしくてさらに問い詰める。そんな母と娘の気持ちの揺れを、とても丁寧に描いています。
サラ役のルナ・ミヨヴィッチちゃんは映画初出演。ボーイッシュですごくかわいい。どこか達観しているようで、実はこどもっぽい12歳の多感な時期を、みずみずしく演じています。
何度か胸が詰まるシーンがありますが、特にラスト近くでエスマが語るところは、いま思い出しても泣けてきます…。
母親の愛って、本当にすごい。
2006年のベルリン国際映画祭でグランプリの金熊賞も受賞した作品。デートで行くにはちょっと重たいかも…ですが、本当に観るべき1本だと思います。
『サラエボの花』
監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ミリャナ・カラノヴィッチ、ルナ・ミヨヴィッチ、レオン・ルチェフ
12月1日より、岩波ホールにてロードショー
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『マイティハート/愛と絆』とアンジェリーナ・ジョリー [2007年11月22日(木)]
『マイティハート/愛と絆』がいよいよ明日から公開されます。
この作品はカフェグローブのユーザー試写会も実施されたので、参加者のみなさんから映画に対する感想をうかがうことができたのですが、「民族や宗教の対立など、世の中には知らない事件が多いと気付いた」という意見と「アンジェリーナ・ジョリーの演技が良かった」という声が多かったです。
この映画でアンジェリーナが演じたのは、テロリストに屈せずに愛を貫いた主人公のマリアンヌ。「名誉と同時に挑戦だった」と彼女が語るくらい、思いいれの強い役立ったようです。たしかに彼女自身が行っている社会的な活動とちょっとかぶってるところがあるんですよね。
と、彼女のことが気になって最近アンジェリーナの著書『思いは国境を越えて』を読んでみたのですが、うーん、この人は本気だってことが伝わってきました。アンジー、カッコいいっす。
本の内容は、彼女が国連難民高等弁務官事務所の親善大使として、世界各地の難民キャンプを訪ね、そこで見たこと、感じたことを綴ったものなのですが、これだけ知名度のある人なら、訪ねたという事実だけでもある意味十分話題になるのに、彼女の場合は各地で10日から2週間ほど滞在して、現地スタッフとともに行動して、彼らの行動の詳細や現地の難民たちから聞いた話について細かくメモしている。自分はどう思ったということより、彼らがどんないきさつで腕や脚をなくしたり家族を殺されたりしたか、どんな生活をおくっていて何を望んでいるかを詳細に記録しているところがすごいなあと思います。
そうすることで、私のように「ハリウッド女優・アンジェリーナ・ジョリー」への興味だけからこの本を手に取ったとしても、読み終わる頃には難民の問題がいかに根深いかについて考えてしまいますからね。セレブであることを最大限に生かして人道問題を支援している。そこがまた、賢いなあと。
そう思って、また『マイティハート/愛と絆』を思い返すと、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーという大物カップルが関わっていることで注目されていますが、それを除くとかなりシリアスな作品だけに、このテーマに関心をもってほしいという彼らの狙いがあったのかも、なんて考えてしまいます。
この映画では、肉感的な唇のセクシーなヒロインは出てきませんが、彼女の新境地が観れるはずです。
役作りのために、髪型も変え、肌の色もダークにして、マリアンヌ本人にそっくりに。
『マイティ・ハート/愛と絆』
監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:ブラッド・ピット(プランBエンタテインメント)他
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、アーチー・パンジャビ、ウィル・パットン他
11月23日(祝/金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて全国ロードショー
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セレブ!
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上を目指すだけが人生じゃない! のんびりしたくなる『ここに幸あり』 [2007年11月20日(火)]
今日ご紹介するのは『ここに幸あり』。
グルジア出身のオタール・イオセリアーノ監督の最新作です。
有名な俳優さんは出ていませんが、唯一お母さん役としてミシェル・ピコリが(小さいけど、写真左がそう)。女性になりきってます。さすが名優!
この監督の作品って、小さい事件がいろいろ起きるのですが、全体的にどこかとぼけたような、のほほーんとした空気が流れている。気持ちよく観れるけれど、しっかりとメッセージもこめられているんですよね。
たとえば、前作の『月曜日に乾杯』では、フランスの田舎で毎日同じことを繰り返している労働者の主人公が、会社に行く途中にふと思い立ってベネチアに行くことにする。そこで、父親の知り合いを訪ねたり、現地で知り合った人の家に招かれたりして過ごし、また家に帰るという話。
観終わって「やってみたい」って思わせるし、自分にもやれそうな気もする。通勤電車と逆方向の電車に飛び乗ってしまう日があってもいいんじゃない? という衝動をちょっと後押ししてくれるような映画です。
最新作の『ここに幸あり』では、大臣だった主人公ヴァンサンがある日突然、大臣を解任されて仕事とお金を失い、愛人と妻に愛想をつかされる。ヴァンサンは途方に暮れるどころか、懐かしい友人にあったり、昔の恋人たちに優しくされたりして、前よりも自由に楽しく生きるようになるという話。行く場所がなくなって橋の下で寝ることになっても、すごく幸せそうなのです。
仕事で責任ある立場につくと、自分の意志とは関係なく、「偉い自分」を演じてしまったりするし、当然のようにもっと上を目指したりする。でも、それって本当に幸せなの? 友人や家族や恋人と時間を過ごすことが大事なんじゃないの? というメッセージ。たしかにね、考えてしまいます。
冒頭に、いかにも偉そうで金持ちそうなおじいさんたちが、自分の棺おけを選ぶのに口論している場面があるんですが、他の人もほしがっているセンスのいい棺おけを、自分だけの物にしたい、といがみ合うサマは痛烈な皮肉。モノに執着すると、ここに行き着くのかー、と思うとちょっとコワイ。
社会的な成功がなくても、愉快に楽しく暮らす方法はきっとあるはず。仕事で煮詰まっているときに観ると、ちょっと視野が広がって元気になれる映画です。
ちなみに、イオセリアーニ監督は、ヴァンサンの友人のアーティスト役として出演。ぜひチェックしてみてください。
写真中央がイオセリアーニ監督。壁に絵も描くし、ピアノも弾いてます。
『ここに幸あり』
監督・脚本・出演:オタール・イオセリアーニ
出演:セヴラン・ブランシェ/ミシェル・ピコリ/ジャン・ドゥーシェ
12月1日より 恵比寿ガーデンシネマにてロードショー
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カッコよすぎるマット・デイモン!『ボーン・アルティメイタム』 [2007年11月12日(月)]
週末に劇場で観てきました!『ボーン・アルティメイタム』。
誰に聞いても評判のよい映画でしたが、たしかにこれは大満足。
(C)2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
シリーズ3作目で完結編になる本作は、記憶を失った元CIAの暗殺者ジェイソン・ボーンが自らの忌まわしい過去に向き合い、彼の“自分探しの旅”に決着を付けるというもの。前2作を観ていたほうが、つながりはわかるかもしれませんが、観ていなくても全く問題なし! 冒頭のいくつかのエピソードで、彼の強さも心の葛藤も理解できるので、話が見えないってことにはなりません。
舞台は、ロンドン、タンジール、そしてNYとめまぐるしく変わり、その都市ならではのアクションシーンにドキドキさせられっぱなし。特にタンジールでの、迷路のような街中をバイクで駆け抜けたり、建物を飛び移ったりするシーンには大興奮でした。特殊な武器が出てきたり、偶然に助けられたり、みたいなムリな展開は全くなし。迫力あるアクションの間に入る頭脳戦も鮮やかで、観ていてワクワク。スピーディな展開でラストまで一気に駆け抜けます。
マッチョなイメージでもなく、アクも強くないマット・デイモンだからこそ、ジェイソン・ボーンの、強いのにとても繊細という部分が、観ているほうにも伝わってきて共感しやすいんでしょうね。マット・デイモン、本当に当たり役でした。シリーズが終わってしまったのが実に惜しい……。
これだけ大掛かりな撮影を、しかも3つの都市で展開するというのは、ハリウッド映画だからこその規模。素直に、ハリウッド映画ってすごい!と思わせてくれる作品でした。
ちなみにこの作品、男の人は間違いなく好きそうなので、デートにもおすすめです。
『ボーン・アルティメイタム』
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、ジョアン・アレン
日劇1ほか、全国公開中
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小作品だけど注目!『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』 [2007年11月07日(水)]
この映画、アメリカで公開された当初はかなり小規模だったものが、口コミで広がってボックスオフィス6位にまでランクインしたという話題作。
アメリカ映画ってことで、国内だから何かウケる要素があったのかも……、と思っていましたが、観たら納得。人に勧めたくなる映画なのです。
(C) 2007 TWENTIETH CENTURY FOX
舞台はアメリカの田舎町。小さなダイナーでウェイトレスとして働くジェンナは、パイ作りの天才。彼女のオリジナルレシピは、食べる人をみな幸せにするし、同僚も彼女の新作をいつも楽しみにしている。でも、彼女の毎日はストレス続き。なぜなら夫が嫉妬深く、彼女の自由を奪っているから。少しずつ夫に隠れてお金を貯め、いつか家出を、と考えていたジェンナだが、ある日予想外の妊娠が判明。困惑しているジェンナを迎えた産婦人科のポマター先生は、彼女のことを気遣ってくれて二人は急接近。彼女は新しい恋を選ぶのか……?
このヒロイン、こんなワガママな夫なんかさっさと捨てて逃げてもよさそうなのに、意外と耐え忍ぶタイプ。夫をなだめつつ、パイのコンテストに出たいんだけど、いいかな〜? なんて、説得してみるあたり、なんとかうまくやっていこうと努力しているのです。夫には思い切り「オレのためだけに焼けばいい」なんて言われて終わるんですけどね。まるで、夫に黙って従う、ひと昔前の日本のよき妻のよう。その妻が、夫とお腹の子どもと新しい恋人を前に、どういう結論を出すのかが、とても興味深いのです。
この映画、ところどころコメディも入っているし、ミュージカルみたいな大げさな動きもある。特にジェンナ役のケリー・ラッセルの、ちょっと人形っぽい演技がとってもキュート。彼女は『M:I:V』でトム・クルーズの教え子役で出ていた女優さんですが、こっちのほうが断然魅力的に見えました。
ほかのキャストも、ビッグネームはでていませんがそれぞれにキャラクターの濃い人たち。ぽわーんとした可愛いキャラだなーと思って観ていたジェンナの同僚のドーン役は、エイドリアン・シェリー。この作品の監督さんでもありました。でも、公開時には40歳の若さでなくなられたのだそう。それは本当にショックで残念な話。ご冥福をお祈りしたいですし、こんなにさわやかな気持ちになれる映画を作ってくれたことに、感謝です。
『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』
監督・脚本・出演:エイドリアン・シェリー
出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ
11月17日よりシャンテ シネほかにて全国公開
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Posted at 02:35
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オンナ友達と
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『タロットカード殺人事件』と『アフター・ウェディング』 [2007年11月05日(月)]
もう11月ですね。しばらく時間が空いてしまいました。
この間に、マット・デイモンも来日していたようですが、リポートできず、ごめんなさい!
今日は、最近公開された作品で、これは見ていただきたい!と思っていた作品について、カンタンにご紹介しますね。
まずは、『タロットカード殺人事件』。
これは、ウデイ・アレンが監督・主演、スカーレット・ヨハンソンが主演の話題作。ウデイ・アレンが惚れこんだミューズ、スカーレット・ヨハンソンとのコンビ第2作目ということで、彼女がとにかくチャーミングに描かれています。
前作の『マッチポイント』のスカーレットは、オトコを翻弄するセクシー女優役でしたが、今回は、かわいいけどどこか抜けてる新聞記者志望の女子学生役。すっかりコメディエンヌになってました。好奇心旺盛で、行動が大胆。だけどおっちょこちょいで失敗もするところがまた可愛い、って昔の少女マンガのヒロインみたいですけど、まさに『おてんば探偵』って感じ(そんなマンガはないですけどね)。何をやっても可愛い。水着姿も、メガネっ娘姿もあって、彼女のファンにはたまらないはず。
それが一番の見どころではありますが、ストーリーも面白い。ワクワクドキドキさせて、途中、展開が読めなくなって、最後は意外な展開で事件を解決、みたいな痛快系の話です。
ウディ・アレンの演じる役ってなんとなく読めるんですけど、いちいちおかしい。今回もスカーレットとのやりとりが、常にやられっぱなしでよかったです。
この映画、もうひとつ、これから観にいくかたにぜひチェックしておいていただきたいのが、スカーレット演じるサンドラの友人ヴィヴィアン役。特に重要な役どころではありませんが、この女優、ロモーラ・ガライが主演の映画が12月に公開されます。『エンジェル』という映画なのですが、その中での彼女の役と今回の彼女の役が、ある意味対極にあるので、チェックしておくと楽しいはず。私は知らずに観てしまいましたが、後から映画宣伝の方にうかがって、このキャスティングはちょっと皮肉なのでは? と勝手に想像してしまいました。
『タロットカード殺人事件』
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、ヒュー・ジャックマン、ウディ・アレン
シャンテ シネ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開中
(C)JELLY ROLL PRODUCTIONS LIMITED 2006/WISEPOLICY
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もう1本は、『アフター・ウェディング』。監督はデンマークのスサンネ・ビア、2007年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品です。
インドで孤児たちの援助活動に従事するデンマーク人・ヤコブが、巨額の寄付金を申し出てきた実業家ヨルゲンに会うため故郷デンマークへ戻る。そして偶然にも、ヨルゲンの妻ヘレナが自分のかつての恋人であるという事実に直面して、翻弄されていく話なのですが、少しずつ事実を明らかにしながら、家族についていろんな問いを投げかける。
軽い気持ちでは見られませんが、ものすごく気持ちを揺さぶられる作品です。
同じ監督の『ある愛の風景』も12月に公開になります。まだ観ていないのですが、こちらも確実に気持ちを揺さぶられそう。
タロットカード殺人事件のようなエンタテインメント性はありませんが、家族とは……、幸せとは……、といったテーマをじっくり考えたい、という方にはおすすめの作品です。
『アフター・ウェディング』
監督:スサンネ・ビア
出演:マッツ・ミケルセン、ロルフ・ラッセゴード、シセ・バベット・クヌッセン、スティーネ・フィッシャー・クリステンセン
シネカノン有楽町1丁目ほか全国順次公開中
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