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ウォン・カーウァイの映像美を堪能! 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』 [2008年03月26日(水)]
 
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』。もう公開が始まっていますが、ウォン・カーウァイ監督が初めてアメリカを舞台に英語で撮った作品です。ウォン・カーウァイといえば、私は『花様年華』と『ブエノスアイレス』がすごく好きですが、どのシーンを切り取っても映像が美しいと思える監督。特に赤・黒・ブルーが独特でキレイだなあといつも思います。



今回は舞台もキャストもアジアの要素はゼロなので、かなりいつもと雰囲気が変わるのでは?と思っていたのですが、それでもウォン・カーウァイっぽい。どこを切り取ってもやっぱり絵になる美しさなのです。公開直前に「めざましテレビ」で、来日したウォン・カーウァイ監督にオリジナル映像を撮ってもらうという企画があって、ショーケースに入ったパイをほんの十数秒の映像にまとめていましたが、それだけでも十分に「らしさ」が出てました。パイにクリームがトロリと流れる感じとか、本編にもありますけど、すごく素敵です。

物語のほうは、失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)が、元恋人の家の向かいにあるダイナーに彼を探しに来るところから始まります。失恋のショックに苦しむエリザベスに毎晩ブルーベリーパイを用意してくれるオーナーのジェレミー(ジュード・ロウ)。彼と話すことで、少しずつ慰められていくエリザベス。でも、どうしても終わった恋を引きずってしまう彼女は旅に出ることを決心。そこから長い旅が始まる、という展開に。

グラミー賞シンガーのノラ・ジョーンズが映画初出演、初主演ということでも話題になっていますが、他の出演者との間にまったく違和感なし。というか、すごくスクリーン映えする存在感がありました。子どもっぽく見えたり、すごくセクシーに見えたりと、シーンごとにまったく別の顔になるところも不思議。そして、これは私だけかもしれませんが、アンジェリーナ・ジョリーそっくりに見える瞬間が何度かありました。どうなんだろう、チェックしてみてください。



ジュード・ロウがダイナーの主人という役はちょっと意外な気もしましたが、どこにでもありそうな店の主人という「誰にでも手が届きそうな存在」にジュード・ロウだなんて、思わず妄想したくなるうれしい設定♪ ウォン・カーウァイ監督、わかっていらっしゃいます。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、レイチェル・ワイズ、エド・ハリス
日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開中
(c)Block 2 PICTURES 2006

60年代のミューズ、イーディに注目! 『ファクトリー・ガール』 [2008年03月21日(金)]
 
60年代のニューヨークに「ファクトリー」と呼ばれるスタジオを構えて、ポップ・アートを生み出したアンディ・ウォーホル。彼に見出されて時代のミューズとなった、イーディ・セジウィックを描いた作品です。

アンディ・ウォーホルに愛され、「ファクトリー」のミューズとなったイーディ。

ショートヘアでアイラインのバッチリ入ったメイク、黒タイツにミニワンピというスタイルのイーディは、まさに60年代のファッションアイコン。映画の中でもいろんなファッションが出てきますが、どれもステキで服に注目するだけでもワクワクする映画。今ちょうど旬のミニドレスのスタイルなど、即お手本にしたい着こなしもあるはず。「ファッション・エッセンシャルズ」でも取り上げているので、そちらもチェックしてみてください。

さらにこの映画の見どころは、イーディとアンディ・ウォーホルの複雑な愛情関係にもアリ、なのです。

名家の出身ゆえに優雅で上品、そして美しいイーディに対して、超有名人でありながら、自分のルックスと貧しい移民出身という階級に強烈なコンプレックスを感じているウォーホル。お互いにないものを求め合った2人ですが、イーディのほうがより純粋。ウォーホルに認められて愛されている、ということが素直にうれしくて心からそれに応えようとしているのに、ウォーホルのほうは、かなりクールな感じです。

強烈なカリスマ性がありながら、一方でものすごく嫉妬深くて冷徹な部分もあるウォーホル。イーディが彼とはまったく違うタイプのアーティスト、ボブ・ディランにちょっと惹かれた後の冷酷さがコワいくらい。実際にこういう陰のある人だったのかもと思わせるガイ・ピアースの演技は説得力アリでした。

上品で素直でキュートで誰からも愛されたイーディが、ウォーホルとボブ・ディランから冷たくされてからは急転落。お嬢様ゆえの純真さと、家庭環境でのトラウマがジャマして、したたかには生きられないんですよね。



そんなイーディの壮絶な人生をシエナ・ミラーが体当たりで演じていています。彼女自身も「オシャレ」のイメージが強かったので、女優魂を見た!って感じです。

公開はもう少し先。イーディの写真集と伝記本が出るらしいので、そちらを先にチェックしてもいいかもしれません。

『ファクトリー・ガール』
監督:ジョージ・ヒッケンルーパー
出演:シエナ・ミラー、 ガイ・ピアース、 ヘイデン・クリステンセン、 ジミー・ファロン
4月19日よりシネマライズほかにて公開
(c)2006 Factory Girl,LLC


犬映画だけど人間ドラマもたっぷり 『犬と私の10の約束』 [2008年03月15日(土)]
 
今日から公開の、犬の映画です。
犬映画ならば、カワイくて癒されるし泣けちゃうはず、という期待にちゃんと応えつつ、でもそれだけじゃありません。
犬の愛くるしさとか、不思議な能力といったことを強調している作品ではなくて、主人公の少女あかりちゃんの成長や周囲の人たちのドラマとして観ても、すっごくいい話。そういう意味でも泣ける映画です。

初期のあかりとソックス。「ソックス」という名前は前足の片方が靴下を履いたようになっているから。

あかりがゴールデンレトリバーの「ソックス」を飼い始めるのが、14歳のとき。そこから10年間、一緒にオトナになっていくソックスとあかりを描いています。14歳から24歳までといったら、中学生から大学、就職と、一番環境が変化する時期。片時も離れたくないと思う時期もあれば、犬を飼っていることをちょっと窮屈に感じるような時期もあって、ソックスとの関係も少しずつ変わっていく。その10年間を丁寧に描いています。

キャストでは、あかりの子ども時代を演じる福田麻由子ちゃんと20代を演じる田中麗奈さんの顔と雰囲気がソックリで、いつ変わったのかわからないくらいに(それはさすがに言い過ぎ?)自然だったことに、まずびっくり。幼なじみの無口な少年、星くん役が佐藤祥太くんから加瀬亮さんへつながるのもとても自然でした。どちらもクラシックギターを弾くシーンがありますが、自信はあるけど控えめ、みたいな感じが共通なんです。

オトナになったあかりとソックス。子ども時代からの違和感ゼロ!

少年星くんについては、引越し先が犬禁止の家だからと、あかりが星くんにソックスを預けることになり、駅で見送るシーンがあるんですが、2人の(ソックスと星くん)の切ない表情がよかった。あんな「置いてかないで」って目をされたら、あかりじゃなくとも泣けてくるというもの。

10年間で、実はあかり以上に変わったかもしれない、父親役の豊川悦司さんもすばらしかった。某CMでは上司と部下役でしたけど(いまはマネージャーと女優?)、田中麗奈さんと親娘の関係というのもいい。ハマッてました。

そういえば、最近雑誌で読んだのですが、犬ってニコっと笑うんだそうですね。なんでかというと、飼い主に愛されたいから。飼い主がハッピーなときに、口角が上がっているのを見て、それを真似るようになったんだそう。いい話ですよねー。ソックスもよく笑っていました。

『犬と私の10の約束』
監督:本木克英
出演:田中麗奈、加瀬亮、福田麻由子、池脇千鶴、布施明
本日より公開中

ハビエル・バルデム緊急来日! 『ノーカントリー』 [2008年03月13日(木)]
 
先日のアカデミー賞で作品賞を受賞した、コーエン兄弟の『ノーカントリー』。
おかっぱアタマの殺人鬼・シガー役でアカデミー助演男優賞を受賞したハビエル・バルデムが緊急来日! これまでにも『夜になるまえに』『海を飛ぶ夢』といった主演作がありましたが、来日するのは今回が初めてなのだそう。ちょっと意外。

はー、ステキ。なのに映画では……

こういうことに…。コワすぎます!

シガーは、顔色変えずに人を殺す得体の知れないキャラでしたが、ハビエル自身は取材陣に「みなさんに集まっていただいて本当にうれしい」と礼儀正しく挨拶。ものすごく和やかでリラックスしたムードの会見でした。ラテン系のルックスだけでもクラクラするのに、スペイン語なまりの英語がまたセクシーで……。はー。

あのおかっぱアタマが決まった経緯については、トミー・リー・ジョーンズが現場に持ってきたメキシコとアメリカの国境付近の写真に写っていた男たちの髪型を見て、コーエン兄弟が、これが面白いからと言って決まったのだと。「私は面白いとは思わなかったけど(笑)。キャラクターの暗い部分が出たと思います」とコメント。

撮影中に大変だったことは、という質問には「朝起きて、鏡を見るのが辛かった。買い物に行っても、変な目で見られるのでまいった」と。あのおかっぱ、てっきりカツラだと思っていたので、自毛と知ってびっくり。本当に役に入り込んでたんだなあと。すごいです。

映画の暴力シーンは好きではないし、銃声も苦手。実際に撮影現場で小道具係に銃を渡されたときも「コワくて触れない!」と思ったというハビエルが、なぜあえて、悪の権化のようなこの役を引き受けたかという質問には「原作(コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』)を読んで、描かれている暴力のレベルが違うとわかった。人が誰でも持っている、内なる暴力を描いていて、哲学的ともいえるから」と。ほかに、若いころにコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』を観て以来、いつか仕事をしてみたいと思っていたというのも大きな理由だそう。

映画の資料には、コーエン兄弟の「ハビエルはアルモドバル監督の作品に出ていた頃から好きだった」というコメントもあり、今回のキャスティングは、めぐり合わせだったのだなあとしみじみ。確実に映画史に残るキャラクターが生まれたわけですからね。

公開は今週末からです。

なんとなく、もう一枚。
写真撮影タイムも、終始フレンドリーでした。


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そういえば今日からフランス映画祭も始まっています。取材に行っていないので、サイト情報レベルしかわかっていないのですが、今年の団長はソフィー・マルソー。映画祭は日曜日まで。

『ノーカントリー』 
監督・製作・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド
3月15日よりシャンテシネほか全国公開予定
(C) 2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

ディズニー映画をディズニーがパロディ!? 『魔法にかけられて』 [2008年03月09日(日)]
 
ディズニーのおとぎ話に出てくる、夢見るプリンセスが、現代のニューヨークにやってきたらどうなるか、というのが、この映画。ヒラヒラのドレスも、オトメな言葉遣いももちろん通じず、気味の悪い不思議ちゃん扱い。やさしい笑顔でかわいそうなホームレスのおじさんに声をかければ、ティアラを取って逃げられる、と散々な目に遭ってしまうプリンセス。



こんな大胆なストーリーを作っちゃって大丈夫? とまず心配になりますが、ディズニーをパロディにしているのは本家のディズニー。よくぞやりました、って感じの潔さです。

なかでもキョーレツだったのが、プリンセスが動物たちを呼び寄せるシーン。おとぎ話の世界ではウサギにリスにクマたちが集合ってところですが、現代版では、ニューヨーク中のハトとネズミとゴキブリたちが集まってくるんです。おぞましすぎる光景ですが、プリンセスは彼らを笑顔で迎え、歌いながら一緒にお掃除。すごい!これが正真正銘のプリンセスってことなんだ、と恐れ入りました。

おとぎの世界から現代に迷い込み、途方に暮れていたところを、弁護士のロバートに助けられたプリンセスのジゼル。前半はとにかくジゼルのお姫様的な行動が浮きまくって、笑えるシーンばかりですが、しだいに彼女の魅力が周囲に受け入れられるようになっていく。後半は、ディズニー映画らしいロマンティックな展開が、ちゃんと用意されています。



ジゼル役のエイミー・アダムスもプリンス役のジェームズ・マースデンも、現実社会から浮きまくったクサーい演技が光ってましたが、圧巻なのは魔女役のスーザン・サランドン。子どもが見たら泣き出すくらい、魔女メイクがカンペキで迫力ありました。

うっとりできるし笑えるしで、本当に楽しい映画です。ディズニー映画だと照れてしまう彼でも、これは楽しめるはず。デートにもおススメです。

『魔法にかけられて』
監督:ケヴィン・リマ
出演:エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、スーザン・サランドン
3月14日より日劇3ほか全国ロードショー
(c) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

スタイリッシュなゆるゆる映画『ダージリン急行』 [2008年03月08日(土)]
 
今日から公開の『ダージリン急行』。監督は、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』のウェス・アンダーソン。どちらにも共通するのは、ユーモアのあるスタイリッシュなゆるさみたいなものかな、と思うのですが、この作品もやはりウェス・アンダーソンらしい。「いい話」をベタにせず、オシャレーな感じに描いてます。



父親の死をきっかけに疎遠になっていた3兄弟が、長男の呼びかけで1年ぶりに再会、インドを横断する列車の旅に出るというストーリー。旅の前半、列車の中でドタバタ事件ばかり起こす3人。いいオトナが揃って何やってんだか、って感じで笑っちゃうのですが、どこかお互いに警戒し合ってもいる。相手にパスポートは預けたくない、みたいな感じで。それが途中、列車を降りてインドの人たちに出会うシーンから、雰囲気がガラリと変わって急に哲学的になっていくのが面白い。

で、彼らの過去の話を交えながら、3人の関係性が変わっていく。バラバラに見えていた3人が(顔も全然違うんですけど)すごく兄弟っぽくなる。でも、しんみりとはせず、あくまでもさわやか。



冒頭で次男役のエイドリアン・ブロディが列車に乗り込むシーンや、途中にでてくるインドの村で葬式に参列するシーンで、いきなりプロモーションビデオっぽくスローモーションになるんですが、それがすっごくカッコよくて。ストーリーとはあまり関係ないんですけど、一番覚えているシーンです。

アニマル柄の3人の旅行バッグもかわいいなーと思って見ていたら、ルイ・ヴィトンがこの映画のために作った特注品なのだそう。列車から放り投げられたり砂漠を引きずられたりと、ものすごく雑に扱われてましたが、ビクともしていない。さすが。

『ダージリン急行』
監督:ウェス・アンダーソン
出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン
シャンテ シネほか全国ロードショー
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX

ヒロインだけがしっかり者 『4ヶ月、3週と2日』 [2008年03月04日(火)]
 
1987年、チャウシェスク大統領による独裁政権末期のルーマニアを舞台に、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶を手助けするヒロインの1日を描いた作品。昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品です。

(C)Mobra films 2007

中絶に対する考え方は、国によっても宗教によっても違うと思うのですが、当時のルーマニアでは、女性は最低3人の子どもを生むようにいわれ、45歳に満たない女性は4人生むまで中絶は禁止、中学生にも出産が奨励されたのだそう。職場には妊娠をチェックする係りがいて、生理が止まったものに対しては確実に出産したかどうか調査されたのがそう。労働力を確保するためということですが、食料事情も悪く、かえって孤児や捨て子が大量に発生することになったのだとか。これは相当コワい社会……。

で、その背景を考えると、ルームメイトの中絶に協力するなんて、きわめて危険なこと。病院では無理だから、ホテルの一室で、しかも違法と知った上で協力してくれる医者を探さなければならないわけで。

ヒロインはこの計画に協力するために、ボーイフレンドからお金を借り、ホテルの予約を確認し、医者を迎えに行き、と、朝から分刻みで動き回る。ところが妊娠した友人はといえば、実はホテルは予約できておらず、用意すべきビニールシートは忘れたのに、手作りのお菓子は準備してくるような能天気キャラ。ちょっとキミ! コトの重大さをわかってんの? とヒロインならずとも突っ込みたくなってしまう。

この映画は、ヒロインの視点で話が進んでいくので、すっと話に入っていけるし、彼女は感情移入しやすいキャラクター。だからこそ、周囲の人たちにイラッとさせられる様子がダイレクトに伝わってきます。

忙しいって言っているのに、母親の誕生日パーティに無理やり来させた挙句、親の前で彼女をフォローしないボーイフレンドとか、心配だから電話を枕元において置くように言ったのに、うるさいからとバスルームに入れてしまう友人とか、観ているだけでも拳に力が入ってキーッとなってくる。ヒロインがいつキレるんだろうかとドキドキするくらい、みんな身勝手。あまりにいろんなことが起きて振り回されるので、映画が終わるころにはぐったりしてしまうかも。

それにしてもこのヒロインはすごい! トラブルが起きても、何とかしようと行動してくれる。彼女の肝の据わりかたが、この映画を魅力的にしているんだと思います。


『4ヶ月、3週と2日』
監督:クリスティアン・ムンジウ 
出演:アナマリア・マリンカ 
銀座テアトルシネマ他全国順次公開中

プロフィール
プロフィール
ミヤモトヒロミ。ライター。映画やカルチャー関連の記事をウェブサイトや女性誌などで執筆。
号泣モノから爆笑ストーリー、胸キュン恋愛ものまで、忙しくても絶対劇場で観たい!と思える映画を厳選してご紹介します!
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