昼も夜も芝居づけ

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蜷川幸雄・演出 小栗旬・主演『カリギュラ』Bunkamuraシアターコクーン [2007年11月22日(木)]
 
みなさん、『情熱大陸』はご覧になりましたか?
私が覚えている限りで前後編に渡って放送されたのは彼が初めてですから、番組史上でもかなり珍しいことだったのではないでしょうか。
それくらい彼がいま旬だということですし、それだけ彼が働いているということなんだと思います。

というわけで、かの番組でも取り上げられていたカミュ原作の『カリギュラ』です。


このポスターも、貼り出された直後から話題騒然でしたねぇ。
しかし、舞台はもっともっと力強くて衝撃的なインパクトに満ちておりました。

『情熱大陸』をご覧になったかたは何となくわかると思いますが、とにかくこの『カリギュラ』、セリフが膨大な上に難解、しかも大きなストーリー展開がない(吉田鋼太郎さんもおっしゃってましたが)という、かなり役者にとってキツイ作品。
なんといっても、世の不条理に絶望し、不条理の限りを尽くしてこの世の真実に近づこうとする若い権力者(それがカリギュラ)の物語、ですからね。
この世に起こることすべてが条理だという不条理。
この世のすべての物が重要であるならば、すべての物が重要でなくなるという真理。
突き詰めていけばいくほどに、真実の迷路に迷い込んでしまう答えのない命題を、カリギュラは延々と問い掛け続ける。
哲学的な内容なのであります。

ストーリーは、ローマ帝国の若き皇帝・カリギュラが、愛する妹の不条理な死に直面し、絶望して失踪する場面から始まる。
重臣たちが心配するなか、屋敷に戻ってきたカリギュラは、誰彼なく人を殺し財産を奪い、女を辱めるという不条理の限りを尽くすようになる。
彼を理解する忠臣・エリコン(横田栄司)、彼を愛する・セゾニア(若村麻由美)、彼に父を殺されながらも彼を受入れようとするシピオン(勝地涼)、そして自らの信念に基づき彼を批判するケレア(長谷川博己)。
次々とエスカレートするカリギュラの残虐非道行為がやがてーー。

とにかく小栗さんの演じるカリギュラは、全身で怒り、全身で絶望していた。
カリギュラの殺戮行為は狂気とされているけれど、小栗さんのカリギュラは狂ってはいない。むしろ、狂おうにも狂えない自分を持て余しているかのよう。
狂ってしまえば、この不条理な現実に堪えられたのかもしれない、が、彼は狂うことができないからこそ、不条理に怒り絶望する。
むしろカリギュラは冷静すぎるほど冷静なように見えた。
不条理の限りを尽くすということはむしろ、不条理な現実が条理になることで、受入れがたい不条理な現実を受入れようとすること。
そんなふうにしか不条理な悲しみを受入れることができない、カリギュラの純粋さは痛々しいほどだ。

勝地さん演じるシピオンが、カリギュラを憎んでも憎み切れないのは、彼のそんな純粋さが通じ合うからだ。
たとえ向かうベクトルがまったく逆の方向であったとしても、根底の部分に持っているものは同じ純粋なもの。
カリギュラもシピオンも、受入れがたい現実を前に生きるには、純粋でいる選択肢しかない2人なのだ。

とにかく小栗さんの痛々しいまでの暴走に、勝地さんの真っ直ぐさが際立つ。
こんなに上手な役者さんだったんだなーとしみじみ。
長谷川さんも理知的な感じが滲み出ていて好演。
横田さんのひねくれ加減もよく、全員がいいバランスで向き合っていた舞台でした。

とにかく難解な作品であるにも関わらず、全員がこの作品の本質をしっかりと受け止めて演じていたことに驚きと同時にちょっと尊敬。
ああ、なんかいいもん観たな。
あ、でもひとつだけ。セリフで構成されたこの作品。小栗さんのセリフがこもって聞こえないところがあったのが残念。
ハキハキと話す必要もないけれど、勢いに流してしまわないほうがいいかも。

『カリギュラ』は、11月30日(金)までBunkamuraシアターコクーンにて上演。
HP:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/07_caligula/index.html

橋爪功&椎名桔平『レインマン』パルコ劇場 [2007年11月06日(火)]
 
正直、最初はどうなのかな?と半信半疑だったんです。
映画を舞台に、しかもあの名作を、ですからね。
でもこれが……いい作品だったんですよ。すごく。

映画はダスティン・ホフマン&トム・クルーズが主演。もちろん、ダスティン・ホフマン→橋爪さん、トム・クルーズ→椎名さん、というキャスティング。
映画を観た方はわかると思いますが、全編を通してこの2人のやりとりが主。
どっちも芝居の上手い、しかもかなり柔軟性のあるお芝居のできる役者さんだけに、かなりいいコラボレーションになっていたのではないでしょうか。

会社を辞めネットトレーダーに転身したがうまくいかず、窮地に立たされているチャーリー(椎名桔平)。
ある日、長い間反目し合っていた父親が死んだとの連絡を受け、遺産目当てに帰郷する。
しかし父親の財産は全額、会ったことのない兄のものとなっていた。
切羽詰まったチャーリーは、兄が自閉症であることを知り、施設から彼を連れ出してしまう。
飛行機が苦手だという兄・レイモンド(橋本功)を連れた旅がはじまるがーー。

舞台や時代に合わせて(映画ではチャーリーは自動車のディーラーだった)、細々と設定が変えられておりました。
それが上手く舞台をまとめていたと思います。
2人の共通する趣味がサッカーだというところ、とかね。

レイモンドが持っていたサッカーボールで、互いにパスを交わすシーン。
それまでは、お互いが自分の主張をし合う一方通行の関係だった2人が、初めてちゃんとしたコミュニケーションを取り合う。
舞台上で本当にボールを使ってパスし合うのですが、ここはかなりアドリブが入っているようで、物凄くお上手な椎名さんに比べ、どうやら橋爪さんは苦手なようで、あちこちにボールを飛ばしてしまいます。
それでも椎名さんは、そんな橋爪さんに気長に付き合います。
そんなリアルなやりとりが役に投影されてきて、なんだかほのぼのとしてくるくらい。

自閉症のレイモンドを演じた橋爪さんは、本当に上手いし愛嬌のある方でした。
橋爪さんの持つ愛嬌がレイモンドという役に乗り移り、レイモンドと出会ったことによって長年抱えてきたわだかまりがとけていくチャーリーの気持ちがすんなりと観ている方にも伝わってきます。
ダスティン・ホフマンは演技派として有名ですが、彼のレイモンドが神経質だけどその神経質さがユーモラスだったのに比べ、橋爪さんのレイモンドは、彼が本来持っている明るさ、天真爛漫さからくるユーモラスさだったような気がします。
誰もが観終わった後、橋爪レイモンドが好きになる、はず。

だからでしょうか、もう中盤くらいから会場の各所から観客のすすり泣きが聞こえてました。
正直、「もう?」と思うところもありましたが、やはりクライマックスでは目頭あつくなってしまいます。
なんというか、セリフと間がいいんですよね。
わりと私はあまのじゃくなので、泣かせよう泣かせようという意図が見えてしまうと逆に冷めてしまったりするほう。
でも、この舞台にはそういうあざとさが見えないんですよね。
演出のスズカツさん(鈴木勝秀さん)は、泣いてほしいと思って作っていないんじゃないかなーと思うくらい。
どこか引いた目線があるからこそ、言葉や芝居が素直に染みてくるのではと思っております。

映画のファンも、映画を観たことのない方も納得のできる舞台になっていますよー。

公演は11月18日(日)まで、渋谷パルコ劇場にて上演中。あと1週間ちょっと! 急いでー!
レインマンのHP:http://ints.co.jp/rainman/index.htm

相葉雅紀・主演 宮田慶子・演出『忘れられない人』東京グローブ座  [2007年10月30日(火)]
 
嵐の相葉くんが主演の舞台です。
この作品はクリスチャン・スレーター主演で、約10年前に公開された映画が元。
それを、演出の宮田慶子さんが「相葉くんを活かせる作品を」を選んで舞台化したもの。
宮田さん曰く「ナイーブで神秘的なアダムの役は、まさに(相葉くんに)ぴったり」(パンフより引用)とのこと。
普段は、明るくて元気な相葉くんですが、ライブで感極まって泣いちゃったりする感受性の豊かさとか、バラエティ番組などでみる、じつは周りの反応に対してすごく敏感だったりするところとか、意外に繊細な面を持ち合わせている人。
そういう部分が引き出されるんだろうなーと、結構楽しみにして観劇。

なんといっても、演出が宮田慶子さんです。
宮田慶子さんといえば、青年座出身の演出家さんで、なかなかに骨太な演出をされる方。
きっちりと脚本を読み込んで、リアルにその世界観を作り込んで見せてくれる方です。

んで、どうだったかといえば……宮田さんの演出、さすがです。
映画の舞台化ってことで、じつは結構心配していたんですが、脇のキャスティングがなんといってもいい。
主軸は、アダム(相葉雅紀)とキャロライン(加藤夏希)のラブストーリーなのですが、キャロラインの友人・シンディ(岩佐真悠子)、アダムとキャロラインが働くダイナーのオーナー・ガス(綾田俊樹)、ウェイトレスのマリー(西慶子)、常連客の2人のビル(原金太郎・五十嵐明)、それぞれのキャラクターが映画よりもしっかりと描かれておりました。
それもこれも、脇にいいキャストが配されていてこそできるワザ。
拙者ムニエルの加藤啓さんとか、劇団虎のこの西慶子さんとか、こういう小劇場のいい役者さんを上手にピックアップしているあたり、さすが宮田さん、知ってますねーって感じです(笑)。

主人公のアダムは孤児院で育ったみなしご。
幼い頃から心臓が弱く、隔離されて育ったゆえに、寡黙で他人とのコミュニケーションが苦手な彼は、働き始めてからも誰とも言葉を交わさず、黙々と与えられた仕事をこなすのみ。
彼が働くダイナーでは、言葉を発しないアダムは、変わり者扱いされていた。
そんなある日、ダイナーのウェイトレス・キャロラインが、ダイナーにやってきたお客にからまれる。
彼らを上手くいなしたキャロラインだったが、帰り道、彼女を待ち伏せしていた男たちに襲われそうになる。
そんな彼女をすんでのところで助けたのは、アダムだった。
じつはアダムは、以前からキャロラインに想いを寄せていたが、好意の表わしかたを知らない彼は、彼女の後をつけていたのだった。
事件をきっかけに、休息に距離が縮まっていく2人だったが、ある時、アダムの心臓が移植を要するほどの状態だとわかり……。

『日経ウーマン』11月号(現在発売中)のステージのページで、相葉くんを取材させてもらっているのですが、そこで、セリフが少ないぶんアダムの心情を身体で見せていかなければいけない難しさについて話してくれておりました。
そんなこんなで、どう演じるのかが興味津々でありました。
いやー、相葉くんの苦労の跡が偲ばれます。

始まって40分近く、セリフがないって本当に難しい。
セリフがあることで、役の気持ちに入っていけるってこと絶対あると思うだけに、セリフなしでアダムのような理解しにくい役をやるのは、さぞや大変だったろう、と。
でも、相葉くんの持っている純粋さとか、一途さとか、正直さとか、そういうものが滲み出ていたな、と。

ちなみに個人的には、加藤夏希さんが思っていた以上に芝居が上手だったのが出色です。
アダムのセリフが少ないぶん、キャロラインはずっとしゃべりっぱなし。
さぞや苦労したと思いますが、映像でずっとやっていた方って、やっぱりどうしても映像向きのお芝居になってしまうものですが、加藤さんったらそういうところがなくて、なかなかに芸達者。
美しいけれども、強い芯を持っていて、明るくて健康的。
キャロラインにぴったりでした。

ただただ残念なのは、アイスホッケーのシーン。
ほかのセットはすごくリアルに作っていたのに、あのシーンだけなぜかベンチが2人が座る2脚だけ。
なんだか逆に意味深過ぎて気になっちゃいました。
映し出すホッケーの試合も、試合が映るよりは客席が映っている方がよかったのでは?とも。
あとは、これって役だから仕方ないことだけど、相葉くんのセリフが少なくて残念。
もう少ししゃべっている相葉くんを観たかった気がします。
ま、相葉くんのスタイルの良さとか、彼の美しさはよく見えましたけど(笑)。
次は鈴木裕美さん演出で、相葉くんの芝居が観たいものです。なんだか、相性がいい気がするんですよね。

『忘れられない人』は11月11日(日)まで東京グローブ座にて上演。
大阪公演は、11月16日(金)〜18日(日)までシアターBRAVA!にて上演。
東京グローブ座のHP:http://www.tglobe.net/

ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出 古田新太主演『犯さん哉』パルコ劇場 [2007年10月21日(日)]
 
最近、バタバタとしていて更新できておらずにすみません。
取り急ぎ、先週観たKERAさん&古田さんという濃ゆ〜いコンビの舞台を。


ちなみに、この舞台でおふたりに取材した時の記事はコチラ

先に感想を述べるなら、本当にデタラメでバカバカしくてすごく素敵でした。
舞台中、何度も「これでチケット代8500円!」というセリフが登場しておりましたが、これが8500円で元が取れたと思うかどうかは、どんだけあのバカバカしさを許容できるかどうか、に通じる気がします。
大体、物語がデタラメなんだもーん。

簡単に説明しますと、ド貧乏な家に生まれたフルタアラタ(古田)の一代記(!?)。
青春挫折編は、服も買えずにパンツ一丁で生活するアラタ少年が、同級生のマサト(入江雅人)に脅されたり、憧れのナカゴシさん(中越典子)と交換日記したりの日々。
しかし、ナカゴシさんはバカな大学生のホシさんに(大倉孝二)夢中。
そんなある日、ひょんなことからマサトに硫酸をかけて溶かしてしまったアラタは、まんまとホシさんに罪をなすりつけることに成功。
しかし、ナカゴシさんからは恨みをかうことになってしまう。

立身出世編は、それから20年後。
細胞蘇生したマサトは、小説家としてデビューし、大ベストセラーを連発。
しかしそれは、アラタがゴーストライターとして書いた作品で……。

すでに、アラタ少年がパンツ一丁でずっと出ずっぱりというところ自体からして、人を喰ったような物語。
当然のように、放送禁止用語あり、下ネタあり、突拍子もない展開の連続にただただ大笑いです。
KERAさんと古田さんが2人で、「こうなったらおもしろいじゃん」って、どんどんエスカレートさせていった感が伝わります。
いい大人が、しかもかたや芝居が上手くて色気のある役者と、かたや音楽もやれば映画監督もやり、ナンセンスコメディを作ったかと思えば、翻訳劇を真っ正面から演出してみせたりするクリエイターが、なのだからすごい。

ここまで徹底して無意味だと、逆に潔くて素敵じゃないかと思うわけです。
年々、歳をとると保守的になってきてしまうものだけど、そんななか、絶対にどこかしらか批判の声が上がることはわかっているような、こういう作品を敢えてやろうとする。
往生際悪く、大人になることを認めない2人の姿勢に拍手したい。
演劇界にこういう人たちがいてもいいじゃないか、というよりも、なんだかちょっとうれしいくらい。
まだまだ、演劇って何が出てくるかわからない禍々しさに溢れている場なんだな〜と思うと、ワクワクしませんか? えっ、しない? …しないかなぁ〜?
とにかく腹の底から思いっきり笑って、彼らの自由さに思いっきり刺激されちゃってください。

あ、でもひと言だけ。KERAさんの笑いって、シュールなところがスキだったりするんですが、今回の作品はそこに関してはちょっと少なめで残念でした。
でも、役者さんも本当にみんな達者な人ばかりで、あんなにまとまりがないのにちゃんと魅せてくれるのはさすがです。

東京公演は、10月28日(日)まで、パルコ劇場で。
大阪公演は、10月31日(水)〜11月4日(日)まで、シアタードラマシティにて上演。
HP:http://www.cubeinc.co.jp/stage/info/okasankana.html

生田斗真主演『ヴェローナの二紳士』東京グローブ座 [2007年10月08日(月)]
 
『花より男子2』や『花ざかりの君たちへ』で、すっかり大ブレイクしちゃった生田斗真さんの舞台です。
なんとこれ、あまり上演される機会が少ないので、広く知られている作品ではありませんが、シェイクスピアの喜劇なんですよね。
なんでもかなり初期の作品らしく、傑作と呼ばれる舞台に比べて、もうちょっとライトな感じです。

ヴェローナに住む、ヴァレンタイン(生田)とプロテウス(柏原収史)は親友同士。
あるとき、勉学の志に燃えたヴァレンタインは、ミラノへ旅立つことを決意する。
一度は友に別れを告げたプロテウスだったが、父の命で彼を追うことになり、恋人・ジュリア(垣内彩未)としばしの別れを惜しみ合うのだった。
一方、ミラノに到着したヴァレンタインは、公妃の娘・シルヴィアに一目惚れ。
そして、シルヴィアもまたヴァレンタインに好意を抱く。
そんななか、プロテウスもミラノに到着。
そして、彼はジュリアという恋人がいるにも関わらず、シルヴィアに心惹かれてしまう。
そして、ヴァレンタインとシルヴィアの仲を知ったプロテウスは、2人の恋を邪魔しようと一計を案じるーー。

恋と友情、そして嫉妬と諦め。恋によって狂わされてしまう男女を滑稽に描く様子は、まさにシェイクスピアの真骨頂。
ここから基礎ができあがっていたのかと思うと感慨深い作品です。

今回、演出がグレン・ウォルフォードさんという、英国でシェイクスピア劇(言うまでもないかもしれないけれど、英国はシェイクスピア劇の本場)などを演出されている演出家さん。
それゆえなのかなんなのか、ものすごくわかりやすい演出をしておりました。
場面によって、ヴェローナだったりミラノだったりと物語の舞台が行き来するのですが、わかりやすいように、いちいち舞台に『MILANO』『VERONA』というロゴが出演。
個人的には、舞台って想像力を高めて観るものだと思うので、少し親切過ぎるような気もしました。
とはいえ、場所がグローブ座だということもあり、舞台に馴れていない若いファンにもわかるような配慮なのかとも思うと、それもひとつの手かなとも。

ちなみに……斗真くんは、本当に素敵でした。
スーツをアレンジしたような衣装だったのですが、それがめちゃくちゃお似合いで、そりゃミラノ公姫も恋に落ちるはず、と妙に納得。
しかも、シェイクスピアのセリフがちゃんと板についていて、思っていた以上にお上手なんですの。

シェイクスピアって、セリフがまるで詩のようにいちいち長い。
自分の気持ちをしゃべる独白のセリフなんか、それはもういろんな修飾語に飾られている。
だからこそ、セリフに感情を自然に乗せるのが難しくて、下手するといかにもセリフを読んでいます、という上っ面な演技に見えてしまいます。
当然、セリフを覚えるだけでもかなり大変ですから、演じるという前に越えるべきハードルもあって、それゆえに役者にとって難しいわけです。

正直、全員が全員、ちゃんとシェイクスピアのセリフをものにしてしゃべっている訳じゃなく、かなり気になるところもあったのは事実。
外国の演出家さんゆえに、どこまで日本語のニュアンスを理解していたのか、ちょっと疑問な部分もありますし。
でも、斗真くんはヴァレンタインの生真面目な部分と、恋に落ちてから冷静さを失ってしまう部分を上手に演じていましたね。
シリアスな場面とコミカルな場面の切り替えのうまさは、『花ざかり〜』(ファンの間では『りの君』というらしい…)で証明しておりましたが。
へんに力入り過ぎず楽しそうに演じられていたのも、すっと作品に溶け込めていた理由かもしれません。
ちなみに、ジュリア役の垣内彩未さんもなかなかお上手。会場からは、「かわいかったね」なんて声も聞こえておりました。

個人的には、斗真くんみたいな人が蜷川さんとやれるとすごくいいなと思っておりますが。
なんにせよ、華もあって真面目で賢くて、今後が楽しみですねぇ。

そうそう、現在発売中の『Hanako(首都圏版)自由が丘特集』に、今回の舞台に絡めて生田斗真さんを取材した記事が載ってます。
よろしければ、そちらもチェックしてみてください。
ちなみに、関西で売っている『Hanako west』とは別ですので、ご注意ください(よく聞かれるの)。


公演は、10月14日まで、東京グローブ座。
10月27日〜28日は、大阪のシアターBRAVA!にて上演。
東京グローブ座のHP:http://www.tglobe.net/
ちなみに、全公演、当日券が若干枚数出るそうですよ〜。詳細についてもHPをご参考に。

オセロ・中島知子主演『郵便配達夫の恋』東京グローブ座 [2007年10月03日(水)]
 
少し前になりますが、オセロの黒いほう、中島知子さんが初舞台を踏んだ舞台を観てきました。
この作品は、過去に鈴木保奈美さん主演で上演された作品で、そちらは拝見していないのですが、かなり評判だったということ。



シンガーソングライターのあかり(中島)は、マネージャーの上村(西川浩幸)に手紙を残し、突然、祖父の住む故郷の島に帰ってきた。
母が亡くなったばかりの彼女は、島でのんびりと遺品の整理をする毎日。
そんなあかりを追って、密かに彼女に思いを寄せる上村が島を訪れた。
彼女は、恋人のピアニストとの恋に行き詰まり、逃げてきていたのだった。
そんなある日、あかりは母の遺品から投函されなかった手紙を見つける。
それは、郵便配達夫・森尾(辰巳琢郎)に宛てた手紙だったーー。

静かでゆったりと時間の流れているような、やさしいタッチの作品でした。
個人的には少し物足りなさを感じてしまうけれど、誰が観てもじわじわと感動できるような作品ではあります。
なぜだかぎくしゃくしてしまった恋、どんなに想っても届かない恋、昔確かに存在したはずの形にならない恋。
いろんな恋がこの物語の中に存在していて、自分と重ね合わせて見ることができる。
大げさじゃない、さわやかなラストも好感。

ちなみに、初舞台の中島知子さんですが、思っていた以上にとてもセンシティブに演じられていてとてもよかった。
もともと器用なかただし、ドラマを観ていても上手だから心配はなかったのですが、周りはみなさん舞台慣れしている役者さんばかりのなかで、ちゃんと主役としての存在感を見せてくれました。
ただ……、あかりはシンガーソングライターという設定で、ギターを片手に歌う場面があるのですが、ギターがぎこちなくて……。
でも、歌はびっくりするくらい上手かったですけれど。でも、それゆえにちょっと可哀想な気も。あそこ、ギターなしっていう演出はなかったのかなーって。
たどたどしいギターに、つい現実に引き戻されて「ミュージシャンじゃないんかいっ!」ってツッコミたくなったり。残念。

あと、西川浩幸さんがよかった。この人、キャラメルボックスという劇団のかたなのですが、こういう軽妙な役、ほんとに上手。
三枚目だけど、人柄のよさそうな感じで、ちょっと変わり者(笑)っていう。
あかりを想う、一途さとか切なさも漂わせつつ、センチメンタルに演じないところが、ラストの爽やかさを一層引き立ててました。

東京公演は残念ながら9月30日で終了。
10月6日 名古屋・名鉄ホール
10月7〜8日 新神戸オリエンタル劇場
10月9日 広島アステールプラザ大ホール にて上演。
HP:http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=96

トムプロジェクトプロデュース『狐狸狐狸ばなし』本多劇場 [2007年09月10日(月)]
 
劇作家・北條秀司が昭和30年代に書いた戯曲をケラリーノ・サンドロヴィッチが演出するという企画で、3年前の初演時に好評を得た舞台です。
じつはこの戯曲、KERAさん意外にもいろんな方が上演しておりまして、昨年には青井陽治さんが演出、水谷八重子さん主演で上演されていましたし、歌舞伎座にて勘九郎さん(現在は中村勘三郎さんですね)が演じたこともありました。

タイトルの通り、キツネかタヌキかといった感じに互いに化かし合う男女の物語。
色男の生臭坊主(板尾創路)と不倫中のおきわ(篠井英介)は、手ぬぐい屋の夫(ラサール石井)を殺害する計画を立てる。
ふぐ料理に毒を仕込み、まんまと夫を殺したはずが、葬儀の翌日、夫が元気に帰ってきて……。

そんな「狐狸狐狸ばなし」を普通に上演するのではなく、KERAさんは後輩を見舞いに来た先輩が後輩に聞かせる話として、このエピソードを折り込んでおります。
とにかく、男も女も一筋縄ではいかない人々ばかりの化かし合いの様子が馬鹿馬鹿しくて大爆笑のお芝居でした。

KERAさんの舞台というと、どちらかというとちょっとオシャレで小粋な美術や映像で、ヴィヴィッドなナンセンスコメディという感じなのだけれど、今回は笑いの部分も結構ベタ。
まあ、もともとの脚本がそうなんでしょうけれど、そのベタさをダサく感じさせないのがKERAさんの演出のなせる技、という感じ。
なんだかね、軽妙なんですよ。それは多分、役者さんの手腕もあるのでしょうけれど、セリフのテンポや間がいいんです。
しかも、ベタな笑いに程よくギャグ(これは北條さんの脚本にはない部分)が差し挟まれていて、これがまた軽妙さを感じさせるんです。

一方で、KERAさんが潤色したもうひとつのエピソードは、シュールな展開に。
こちらもまた、男と女、医者と患者の化かし合いみたいな要素が挿入されております。
正直、こちらはなくてもいいかな、とも思ったのですが、KERAさん的にはもっとナンセンスなテイストを加えたかったのかな、と解釈。

で、観ながらぼんやりと思ったのは、次に歌舞伎の新作を手がけるべきは、KERAさんなのではないのか、ということ。
野田秀樹さんの『研辰の討たれ』以降、三谷幸喜さんの『決闘!高田馬場』や、蜷川さんの『十二夜』や、渡辺えり子さんの『舌切雀』と、いろんな演出家が手がけておりますが、
KERAさんならば、歌舞伎の歌舞伎らしさを残しながら、程よく新しい挑戦を折り込んだ歌舞伎を作ってくれるのでは、と思った次第。
まあ、ものすごく個人的な感想なんですけどね。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出『狐狸狐狸ばなし』は、全日程公演終了。
千秋楽にしか観に行けなかったの……すみません。
でも、再演が決まったらぜひに。
トムプロジェクトのHP:http://www.tomproject.com/works/kitsune.html

劇団☆新感線2007夏休みチャンピオン祭り「犬顔家の一族の陰謀 〜金田真一耕助之介の事件です。ノート」池袋・サンシャイン劇場 [2007年08月29日(水)]
 
お久し振りの、新感線のおポンチ系芝居です。
おポンチとは、いわゆる「髑髏城の七人」とか「朧の森に棲む鬼」とか、真面目で重厚な舞台とは一線を画し、おバカなネタ満載のとにかく笑える“ネタもの”芝居のこと。
まあ、タイトルを見ていただくだけでも、そのふざけっぷりはわかるかと思うのですが、これが……本当に……バカバカしさ満載で楽しかった〜。

当然、あの横溝正史作「犬神家の一族」(この間、尾上菊之助出演で映画がありましたね)のパロディですが、もうそれだけじゃ新感線は終わらないんです。
冒頭、いきなり「オペラ座の怪人」、「キャッツ」、「コーラスライン」と、有名なミュージカルを模倣した、似て非なるおバカなショウがスタート。
本編に入っても、瀕死の床にある犬顔家の当主が、美空ひばりさんなどの霊に取り憑かれたり(って、物真似するんですけどね)と、もうデタラメの限りを尽くして笑わせてくれます。

こういうのって、なんだかいいなぁ。
30や40になってもまだまだバカできるのって、本当に素敵だと思う。
しかも、いい大人たちが、みんな全力なんですよ。おもしろがることに。
歌もダンスもパロディといいながらも結構ちゃんと作ってあって、知っている人はわかるけれど、まったく同じじゃないメロディラインとか、本当に凝っていて、なんて贅沢なおふざけ!
なんだか久し振りに、新感線の真骨頂を観た気がします。

あ、そうそう「エリザベート」の「闇が広がる」のパロディもありましたね。
ああいうパロディも、パロディだってわからない人に対しても、ちゃんと面白おかしく作ってあるんです。
置いてけ堀にしないところが、新感線というか、演出家・いのうえひでのりさんのすごいところ。
お芝居を見慣れていない人でも、演劇が好きじゃない人でも、誰でもが観て楽しめる舞台。

公演は、あと10日あまりですが、お暇があればぜひに。
9月9日(日)まで、池袋・サンシャイン劇場で上演中。
劇団☆新感線のHP:http://www.vi-shinkansen.co.jp/

地球ゴージャスプロデュース公演 vol.9『ささやき色のあの日たち』Bunkamuraシアターコクーン [2007年08月07日(火)]
 
岸谷五朗さん、寺脇康文さんという2人が、舞台をメインに活動するユニットが地球ゴージャス。
これまでに、唐沢寿明さんとか戸田恵子さん、高島礼子さん、小泉今日子さんなど、豪華なゲストが出ているので、ご存知のかたも多いかも。
今回は、北村一樹さん、山口紗弥加さん、須藤理彩さんというメンツを迎えての公演。
ただし、寺脇さんはスケジュールの都合で出演ならず、初の岸谷さん単独のゴージャスでした。

どこだかわからない、とある空間でばったりと顔を合わせた2人の男(北村・岸谷)。
2人は自身のことを語り合ううち、話題は「自分が出会った最高の女」へと辿り着く。

その運命の女っていうのが、山口紗弥加さん、須藤理彩さん、という訳なんですよね。
公演前、山口さんにこの作品で取材させていただいていて、そのときに「運命の女、なんてとんでもない、できません、って断わろうと思ったんです」と話しておりましたけれど、いやいや、すごくよかったです。
取材したから、っていう訳ではなく、私が想像していたよりもずっとずっとよかったんです、これが。
彼女はバンドの女性ボーカリスト、という設定なのですが、歌、イケるんですね、彼女。
ちょっとセクシーで、パワフルで、だけどどこか繊細さがあって、今回の役にハマっていました。

あと、北村さんもやっぱり上手い。
カッコつけのタイミングと、ハズしのタイミングが絶妙で、いい感じに岸谷さんを翻弄していたと思います。
しかも、やっぱり本当にカッコいいんです。生で観る価値あるイイ男っぷりでした。
今後、ストレートプレイにもっと出てほしいと思う今日この頃。
いやはや、北村さんのカッコよさと、山口さんの妖艶さをたっぷり堪能できる舞台。
2人の今後がますます楽しみですー。

『ささやき色のあの日たち』は、8月26日まで上演。
HP→http://www.amuse.co.jp/chikyu/vol_9/

Piper結成10周年公演『ひーはー』本多劇場 [2007年08月07日(火)]
 
劇作家で演出家の後藤ひろひとさん、俳優の山内圭哉さん、川下大洋さん、腹筋善之助さん、竹下宏太郎さん、という5人のユニット。
10周年なんだそうです。それゆえか、水野美紀さんと片桐仁さんという豪華ゲスト陣を迎えての公演。
最初に言ってしまうと、なんだか馬鹿馬鹿しくておかしくて笑える芝居でした。

日本のどこか、国道から数時間も離れた僻地にある、ステーキレストラン。
そこに住まうのは、ちょっとおバカで抜けてる夫婦と、悪知恵の働く娘。
彼らが引っ越してきてから3年、お客が一度もやってくることのなかったその店に、外国からのゲストが訪れることになり、3人は大慌て。
そんななか、その店を空き家と勘違いした西部劇マニアたちが、西部劇ごっこをするために店に訪れる。
そしてまた、自分たちが起こした自動車事故を隠ぺいしようとしたイベント会社を共同経営する男女や、殺人の依頼を受けたと思い込んだ元傭兵、そして彼をとらえようと追ってきた軍人ら、それぞれ別の目的を持った人々が、ステーキレストランに集結し……。

……とまあ、あらすじを書いてみたところで、まったくわからないと思われる内容(笑)。
まったく違う目的で同じ場所に集まった男女の勘違いと思い込みのオンパレードで、そのとんちんかんな思い込みに、観客はとにかく大爆笑。

彼らの目的も勘違いも馬鹿馬鹿しいけれど、そこに至るまでの設定は緻密じゃないとできない作品。
こういうドタバタなスラップスティック芝居は、まさに後藤さんの真骨頂です。
しかも、彼らときたら、ミクシィで知り合った西部劇マニア仲間だったり、イベントにチュートリアルを呼ぶはずが、間違えてクロード・チアリを呼んじゃったりとか、設定からして間が抜けてる。
でも、ありえないくらいバカバカしい設定なのに、どこか「もしかしたら、こういう人たちいるかも」って思わせるリアリティの部分があるところが後藤さんのうまいところ。
どこからか聞こえてくるギターの音色を「チアリの祟りだ」って思い込んじゃったり。
もし自分がこんな状況に置かれたら、本当にそう思っちゃうかも、ってね。

そういうキャラクターの滑稽さが、イコールで彼らのかわいさでもあって、だからこそ後藤作品は人気なんだろうなぁ。
ダメでおバカだからこそ、なんだか妙に愛おしいんだよね。
とにかく笑いたい、とにかくスカッとしたい、って人にはぜひ。
←今回のパンフも、雑誌的な企画モノの構成が凝ってて面白かったです。パンフの内容って重要だと思うんですよ。観客がお金出して買うものだから、買って帰りの電車で楽しめるものじゃないと。

『ひーはー』は、8月12日(日)まで、下北沢・本多劇場にて上演。
以降、仙台、名古屋、福岡、広島、大阪にて公演あり。
HP→http://www.nelke.co.jp/stage/piper10th/

プロフィール
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望月リサ。ライター。女性誌やWebサイトでインタビューやカルチャー関連の記事を担当。締め切り間際でも観たい舞台は絶対にハズさないステージフリーク! 「ライブじゃなきゃ味わえないこと、いっぱいあります。ハマるとこんなにすばらしいものはないです。劇場にもっともっと足を運びましょっ。」
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