昼も夜も芝居づけ

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THE SHAMPOO HAT『立川ドライブ』シアタートラム [2008年06月08日(日)]
 
赤堀さんらしい、ジメーッとしていて後味の悪ーい芝居(笑)でした。

冒頭に、男女二人が舞台上に倒れている(寝ている?)シーンが入り、そこに至るまでを時間を刻みながら描いていくという構成。
まあ、いってしまえばよくある構成だし、途中からはラストまでの展開が見えてしまうだけに、ストーリー展開のおもしろさで見せる芝居じゃない。
ただ、物語の行き着く先がわかっているだけに、逆に追いつめられていくようなジワジワとくる怖さを感じる作品でした。

題材になっているのは、最近よくニュースで耳にするようなストーカー殺人。
もはや、こんな異常な物語も『ありきたり』と感じてしまうような世の中ですが、長塚さんがそれを必死で乗り越えようとしている一方で、赤堀さんは敢えてありきたり、になってしまった世界を描くんだなーと思ったりして。

立川のキャバクラで源氏名・さやかとして働く洋子(坂井真紀)は、腐れ縁の彼氏、片岡(野中隆光)からキャバクラを辞めるように迫られながらも、言い訳しながら勤め続けている。
そんな彼女の元に足しげく通うのは、警察官の松田(赤堀雅秋)。
松田は、次第に洋子への思いを募らせていき、興信所の調査員・佐野(日比大介)に依頼し、洋子のプライベートにまで踏み込んでゆく。
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阿佐ケ谷スパイダース(長塚圭史・作演出)『失われた時間を求めて』ベニサンピット [2008年05月25日(日)]
 
雑誌の取材などでも長塚さんが話していた通り、これまでの阿佐ケ谷スパイダースとは大きく違った作風のお芝居でした。
これまでは、悲惨な物語のなかに生きていくことの切なさを滲ませたドラマティックな作品が多かったのですが、今作は大きな事件は何も起らず、淡々と進んでいく会話劇。
舞台には、電灯とベンチがひとつ。
その周りには溝があり、落ち葉が敷き詰められている。
左右そして舞台奥に壁があり、木のドアがある、野外のようでもあり、室内のようでもある不思議な空間でした。

このセットを観て、エドワード・オールビーの『動物園物語』みたいだな、と思ったら、後半にこの作品について語る場面が。
『動物園物語』へのオマージュと言ってしまっていいのかわからないけれど、間違いなく創作の根っこにあったんでしょうね。
この戯曲は、オールビーのなかでも初期の作品で、いわゆる“不条理劇”と呼ばれる作品。
まあ、じゃあ不条理劇ってなんだ?ってことになるんですが、言ってしまえば、物事はすべてに因果関係がある訳ではなく、不条理な出来事もいっぱいある、というようなことをとりとめなく淡々と描いた芝居。
誤解を怖れずに言うと、物語に起承転結がなく、“クライマックス”もいわゆる“オチ”的な展開がない訳です。

これまでドラマティックな芝居を書いてきた長塚さんが、不条理劇を書くってことで、幕が開けてから賛否両論さまざま。
確かに、長塚さん的な世界観を求めて劇場に足を運んだ人は、肩透かしを喰う内容ですよね。
でも、先日『日経WOMAN』で長塚さんを取材したとき話していたのは、
「いわゆる阿佐スパ劇場みたいになってしまうのはつまらない、根ざしているものは変わらないけれど、時代は変わるし自分もかわる。変わることにビクビクせずにいたい」
というようなことでした。
観客が求めているものを作って出す、のではなく、もっともっと自身のいろんな表現方法、自身のいろんな可能性を試しているのだな、と思った次第。
それゆえに、私個人としては、この長塚さんの挑戦を頭から否定する気にはならんです。
早い段階から注目をされて、人気をともなって大きくなってしまった人だけど、じつはまだまだ年齢的にも若手、なんですもんねー。
いまから作風を自分で決め込んでしまってはつまらんですよ。
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ONEOR8(田村孝裕・作演出/田中直樹(ココリコ)出演)『莫逆の犬』THEATER/TOPS [2008年04月28日(月)]
 
このごろ、悲惨な事件が次々と報道されています。
その度にニュースやワイドショーが大きく取り上げ、犯人の人物像や事件の背景などを詳細に放送しております。
しかし、事件を起こしたという先入観があるゆえに、見えなくなってしまうものもきっとあるはず、と思う。

いま脚本家として注目されている田村さんの最新作は、大人しくて人のいい男だが、ある日カッとなって母を殺してしまった一郎(田中直樹)と、彼を庇って部屋に住まわせている恋人の美月(和田ひろ子)との10年に渡る生活を断片的に描いたもの。
美月の家に来て以来、一度も外へ出ようとしない一郎。
最初の頃こそ発覚を怖れながらもふたりの生活に満足していた美月。
しかし、部屋を訪れる美月の弟・照実(関川太郎)や、その会社の先輩たち、美月の職場の同僚・りょう(冨田直美)や八雲(恩田隆一)らとの関わりのなかで、ふたりの関係が次第に変化してゆく。

タイトルの“莫逆”とは、goo辞書によれば「互いに争うことがない親しい間柄。また、親しい友」だそうです。
莫逆の犬とは、毎日のように部屋で恋人の帰りを待ち、恋人が与える食事を食べるだけの存在、一郎のこと、なんですね。

逮捕を恐れて美月の家から一歩も外へ出ずに暮らしている一郎のことを、あるとき美月が「これじゃ、刑務所と同じじゃない」と言い、それを聞いた一郎の父親(小林隆)は、「同じじゃない、美月さんが一緒じゃないか」と返すシーンがある。
でも、それは本当は美月自身が自分に投げかけていた言葉なのかもしれない、と思う。
犯罪を犯してしまった人のいい恋人、という綱に繋がれて、綱の届く半径数メートルの世界だけしか歩き回れない自分もまた、莫逆の犬なのかもしれない、と。

殺人の生々しさや、警察から逃げ回っていることへの切羽詰まった空気はどこにもない。
ただ、作品にずっとまとわりつくのは、どことなく不穏な空気。
それが真綿のようにじわりじわりと劇場を閉塞感で包み、ラストに残るのは大きな空虚感だ。
ラストは切なくてやりきれなかったなー。
脱力したように窓に背を向けて座る田中さんの姿が、その切なさを一掃感じさせてくれます。
映画やドラマで観ていて、芝居も上手い人なんだなーと思っていたのですが、舞台でも不思議な匂いを放っていてとてもよかったです。
普段はいい人、を演じることが多いですし、この作品でも基本的にはそういう役なのですが、どこか狂気を孕んでいるようなところを感じさせてくれます。

物語としては、警察の追跡にさして怯えていない彼らに違和感を覚える部分もありましたけれど、ラストの暗転後の父親がドアを叩く場面などは、うまいなーと思いました。
田中さんのシーンで終わりかと思っていたけれど、あのシーンがあることで、田中さん&小林さんの演じる親子の、愚かなほどの美月への依存ぶりが如実に見えてきて、より憐れで情けなくて切ないラストになっておりました。

でもそれだけに、もっともっと田中さんに焦点を当ててよかったのではとも。
美月と一郎、両方に焦点を当てているがゆえに、心理的に入り込めない部分もあったのは事実。
美月が一郎との日々を「思い出がない」と言っておりましたが、私は日常の何気ない出来事ほど思い出になると思うんだよなー。
「外に出られない」「一緒に出掛けられない」ことよりも、匿ってもらっているという負い目から、“恋人じゃなくペット”になってしまったことの方が切ないはずなのに。

公演は残念ながら終了。ただ、公演中にムービーが入ったようなので、シアターテレビジョンで放送されるか、DVD発売になるのかもしれませんね。
ONEOR8のHP:http://homepage2.nifty.com/oneor8/

劇団青年座(赤堀雅秋・脚本/黒岩亮・演出)『ねずみ男』下北沢/本多劇場 [2008年04月20日(日)]
 
青年座といえば、結成から50年以上を数える老舗劇団ですが、ここのところ若手の注目作家たちとのコラボレーションを積極的に行っています。
じつは昨年、MONOの土田英生さんが書いた『悔しい女』を拝見したんですが、MONOで観るのとはまた違った、いい味わいがあって楽しめたものです。

そんな期待感があって、今回の赤堀作品も拝見させていただきました。
いやいや、なかなかに赤堀さんらしいほの暗いトーンの興味深い作品でした。

小さな自転車店を営む男(山本龍二)は、とある女性(野々村のん)を誘拐・監禁する。
その日は、男の娘(もたい陽子)の誕生日。彼女は、3年前に家を出て行ったまま。
じつはその日のちょうど3年前、男の妻(津田真澄)が自殺していた。
そして女性は、3年前に男の妻を万引きで捕まえた、スーパーの店員だった。

現在と妻が自殺した3年前の今日とが、入り乱れて展開する物語。
男は終始、うつろで暗い瞳で、3年前の妻を、そして誘拐した女を見つめ続ける。
そして女は、明らかに逆恨みされていると知りながらもけっして逃げようとはせず、3年前の妻は、まるで自殺するような素振りすら見えない。

物語が進むにつれて見えてくるのは、それぞれが抱えるぼんやりとした心の闇。
それは、不安だったり不審だったり、ちょっとした絶望だったり。
傍から見れば「誰もが抱える程度の…」と見えてしまうかもしれない。
でも、そんな闇にからめ捕られてしまった時、引き上げてくれる手がなかったら、そのまま堕ちていってしまうことは簡単だ。
妻の自殺の理由もまた、不意に訪れた闇にからめ捕られてしまったんだと思う。

男は、監禁した女に妻と同じ闇を見つけ、不意に妻が自殺した訳を知る。
ラストの展開に、こみ上げてくるものがあった。
そうなんだよね。闇に引き込まれそうになっている時、闇から救い出してくれるのは人の温もりだったりするんだよね。
誰でもいい。「いまこの世にあなたが必要だ」と言ってくれる人であれば誰でも。
でもしっかりと手を伸ばして、堕ちゆく闇から救い出して欲しいと思っているんだよね。
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ナイロン100℃ 31st SESSION『わが闇』下北沢・本多劇場 [2007年12月18日(火)]
 
最初に断っておきます。これ、本当に傑作でした。
私個人としては、KERA作品のなかでも3本の指に入る傑作(ちなみにあとの2本は『フローズンビーチ』と『カラフルメリィでオハヨ』)。



上記のポスターからもわかる通り、KERAさんの作るものっていうのは何だかスタイリッシュというか「洒落てる」んです。
私、基本的に「オシャレ〜」みたいなものが苦手なんですけど、KERAさんの作る世界は別。
なんだか「オシャレ〜」にある「とりあえずオシャレにしとくとイケてるでしょ」みたいな匂いがないから。
たぶん、KERAさんって本当にセンスがいい人なんだと思う。
だからこそ、デザインも優れたものが好きだし、役者も勘のいい人が好きなんだろうな。

今回の舞台、全体的にすばらしいところは満載なのだけれど、とくに驚かされたのが照明と映像。
舞台は古い日本の家(日本家屋と呼ぶとちょっと違うか?)なのだけど、その陰影にすごくこだわっているのがわかるんです。
たとえば、階段の柱や障子の桟の影がズレる、という演出があるんです。
これ、言葉では上手に説明できないのだけれど、おそらく照明じゃなく映像で作っているのだけど、これがちょっとびっくりするんです。
舞台の照明がかなり暗くなったかと思うと、そこに浮かび上がっていた影が、徐々にズレていく……これからの物語の展開を暗示しているような奇妙さもあるけれど、おもわずキレイ、と思ってしまったりして。

あと、冒頭に近い坂井真紀さん演じる類子が、襖を開けて奥に引っ込むシーン(わかる人だけに説明すると、父親が志田潤を連れてきたことに反発して居間から出ていくところ)。
ここまでがプロローグで物語が始まるのですが、ここ映像をすごく上手に使っていて、後方の席で見ていた私は、最初、映像だと気付かずに驚いちゃいました。
いやー、かっこいいし新鮮。
こういう映像の使い方があるんだな、と感心してしまった。

物語の始まりは、31年前。小説家・柏木伸彦(廣川三憲)と妻の基子(松永玲子)、娘の立子(犬山イヌコ)、艶子(峯村リエ)、類子(坂井真紀)、そして伸彦の書生・三好未完(三宅弘城)は、とある田舎に引っ越してくる。
やがて、父の影響で長女の立子は小説を書き始め、若くして天才小説家と騒がれるようになる。
父の伸彦は、そんな娘を脅威に思い始め、次女の艶子をかわいがるのだった。
そんななか、妻の基子が精神を病み始め、夫婦は別居することとなる。
6年が過ぎ、伸彦は若い恋人・志田潤(長田奈麻)を家に入れ、長く別居していた基子と正式に離婚を申し入れる。

とにかくディティールが細かくて、それぞれの些細な出来事がすべてに複雑にからみ合っていて、あらすじがはしょれないのがKERA作品の特徴。
じつはこの後、大人になった柏木家の三姉妹を中心に物語が進んでいくことになるんですが、何気ない場面に、姉妹それぞれが家族に抱いている気持ちがじわじわっと出ていて、これがまたいいんだなー。

姉妹って一番近い女友達でもあり、最も比べられやすいライバルでもあり、同じDNAを持つ家族(言ってしまえば、両親よりも兄弟のほうがDNAの共通部分は多いはず)。
しかも、幼い頃に母親が精神を病んで別居し、その後に継母がやってきたり、と複雑な事情を共に抱えて成長してきているだけに、その複雑さといったら…。

父親は長女・立子を嫉妬し、立子は父親に可愛がられる艶子を羨み、逆に艶子は才能を持った立子(小説家)と類子(女優)を羨んでいる。
母・基子に可愛がられていた類子は、志田潤を嫌悪する。
ああ、あるなぁ。家族、とくに同性同士だからこそ、どうにもならなくてモヤモヤとしてしまうことって。

なんか、こういう物語でした、とは簡単に説明できない作品だけれど、観終わった後のじわじわと押し寄せる感動とか悲しみとか、温かさとか、さすがKERAさんです。
もちろん、KERA作品らしい笑いもあって、重たい家族の物語で終わらず、ちゃんと笑わせてくれるエンターテインメントでもありました。
劇場での折り込みパンフにKERAさんも書いてあったんだけど、昨年、コクーンで上演された『労働者M』以来、1年8か月の断筆をして書き上げたのが『犯さん哉』と、この『わが闇』だということ自体、本当にKERAさんって素晴らしい。

今回のチラシに、ナイロン100℃を「奇跡的なチーム」と書いているKERAさんのコメントが載っていたけれど、本当に奇跡的に集まったチーム、だと思う。
KERAさん独自の笑いの世界を理解して(笑いの共通言語、とKERAさんは言ってましたね)いて、しかもそれを表現できて、笑いだけじゃない叙情的な芝居もできる。
みんな、巧みですわ。すばらしいです。
奇跡的に集まった集団が創り上げた傑作をぜひとも。これを見逃したら後悔すること間違いなしです。

東京公演は12月30日(日)まで。当日券は開演の1時間前から劇場で販売。
大阪公演は、1月13日(日)・14日(月・祝)にイオン化粧品・シアターBRAVA!にて。
以降、1月17日(木)〜19日(土)札幌・道新ホール、
1月23日(木)広島・アステルプラザ、
1月26日(土)・27日(日)北九州芸術劇場、
1月30日(水)・31日(木)新潟・りゅーとぴあにて上演。
ナイロン100℃のHP:http://sillywalk.com/nylon/

五反田団『生きてるものはいないのか』こまばアゴラ劇場 [2007年11月07日(水)]
 
五反田団、ってなんか気になる名前ですよね。
主宰で作演出の前田司郎さんが、五反田出身とのことでこの名前なんだそうです。
数年前に「おもしろいよー」という話を聞き、そこからすっかりあのにゅる〜い前田ワールドにはまってしまっております。

ちなみに、前田司郎さんは現在作家としても活躍しており、『恋愛の解体と北区の滅亡』で三島由紀夫賞候補に、『グレート生活アドベンチャー』で芥川賞候補にノミネートされたりしております。
劇作家としても『キャベツの類』や『さようなら僕の小さな名声』で、岸田國士戯曲賞候補になったりしています。
残念なのは、どれもノミネート止まりなんですよね。
でも、もはや賞に最も近いところにいる、といっても過言じゃないと思っています。

そんな五反田団の新作は、とにかく人が次々と死んでいく物語。
まあ、タイトルが「生きてるものはいないのか」ですからね。

喫茶店で結婚を約束した恋人と、男の子供を妊娠した女に挟まれている男。
2人から今後の進退を問われるが、男はのらりくらりと返答するのみでどこか真剣味に欠ける。
一方、大学のキャンパスでは、都市伝説研究会に所属する女や、友人の結婚式の余興で披露するダンスを練習する面々らがいる。
そんななか、突如、都市研究会の女は咳込んだかと思うと苦しみ出し、突然死を遂げる。
その後、原因不明のまま人が次々と死んでゆく。

他人の話をまったく聞かずに自分の興味のある話題だけをしてゆく女、オチがない話題をだらだらと続ける男。
噛み合っていないのにも関わらず、誰もがそこに気を止めることも無くだらだらと続いていく大学生たちの会話のリアルさに感心。
いやー、うまいす。何気ない光景というか、「あるある」と思わず膝を打ってしまうような光景。傍から見ると滑稽すぎて苦笑い。

原因不明のままにバタバタと人が死んでいくなか、死の恐怖におびえる人々。
そんななか、病院に入院中の死を身近に感じていた少女はひとり冷静に眺めている。
周りのみんなが元気なのに、なぜ自分は死ぬ運命にあるのか。ずっとそんな疑問も自問自答し続けていた彼女にとっては、周りが死んでいく現実では、死の恐怖がなくなっているのかもしれない。

舞台の上に、次々と死体の山が築き上げられていく。
いってみれば、ものすごくシュールな光景であるにも関わらず、観客であれう我々は、死を目前にした断末魔の叫びに思わず笑ってしまったりする。
実際、こんな光景を目にしたならば、どんなにそれが滑稽であっても、笑うことは許されないだろうし、笑えないハズ。でも笑ってしまうのは、彼らが演劇の世界で死ぬ、ということが我々にはわかっているからだ。
これも、演劇的な嘘を逆手にとった演出なのかもしれない。

前田さんの作品は、どこまで意図的なのかわからない、だらだらとしたゆるさがある。
それゆえに逆に、すべてがすべて意図的に考えられたことなのかも、と思ったりもする。
真相はどうなのか、本当のところは前田さんに伺ってみないことにはわからない。
でも、そうやっていろんな方向から解釈できる作品という意味で、非常に演劇的でもあると思う。

なんだか、何気ない会話に笑ったり、笑った自分を振り返って怖くなったり。
いろんなことを考えることができる作品でした。いや、よかったー。
チケット代が2000円とお安く設定しているので、興味がある方は映画1本分と思ってぜひ劇場へ。
なかなかに刺激的な体験です。

公演は、11月12日(月)まで、こまばアゴラ劇場。
HP:http://www.uranus.dti.ne.jp/〜gotannda/
こちらから、チケットの予約が可能だったりします(当日券もあり)

表現・さわやか『ポエム』下北沢・駅前劇場 [2007年11月05日(月)]
 
一旦書いたブログが、なぜか登録できずに全消去。なんだか、最近ついておりません。

ま、それはともかく、表現・さわやかとは、猫のホテルに所属する池田鉄洋さんを中心に結成されているコントユニット。
池田鉄洋さん、通称イケテツさんは、現在放送中の『医龍 Team Medical Dragon』に木原役で出演しております。
ほかにも、妻夫木くんの『東京ガス』のCMや、SMAP・中居くんの『明治チョコレート』のCMにでていたこともあり、顔を見れば知ってる人は知っているかも、の役者さん。

小劇場……コント……ユニット……なんだか、禍々しい空気が漂う感じですが、これがおもしろかった。
よくある内輪ネタにならず、ちゃんと一歩引いた目線から作れている笑い、とでもいいましょうか。
作っている本人たちが一番おもしろいようじゃ、観客はただただ引く一方なのですが、彼らの完成された馬鹿馬鹿しい笑いを真面目にやる姿には感心。
もちろん、くだらなさも全開!(←いい意味で)笑った笑った。

今回は恋をテーマにした、いつもよりちょっとスイートなテイスト。
とはいっても、それが軸にあるだけで、ネタ祭りキャラ祭り、なんですが。

片岡(佐藤貴史)は、転校早々に同級生のミミ(柳沢なな)に一目惚れ。
しかしミミは、野茂(岩本靖輝)の恋人。片岡はあっさりと失恋するが、それでもずっと彼女を思い続ける。
一方、高校卒業と同時に上京したミミ。野茂との同棲生活を始めようとした矢先、野茂が時報兄弟に教われ、失踪してしまう。

個人的には、佐藤真弓さんのショウウィンドーのトランペットを眺める少年、がスキでした。
やっぱりうまいなー。子供から老人、不思議な生命体?動物?まで、自在にこなす人です。
あとは、マッスルミュージカルのパロディが秀逸。よく内容をわかってパロディにしている感じ。イケテツさんはご覧になっているのでしょうか?
お約束の長井大(胴着を着てパフォーマンスをするスター?)も登場したり。
もうネタが次々と食い気味でやってくるので、2時間弱飽きさせません。

ゆるーいデタラメな笑いですが、ちゃんとデタラメなトーンが統一されているといいましょうか。
まあ、好みはあるだろうし、もっと演劇的な意味が必要な人には向かないかもしれません。ただ、なんかおもしろいものがみたい。なんて気持ちの人におすすめです。

東京での公演は、11月12日(月)まで、下北沢・駅前劇場にて。
大阪公演は、11月23日(金)〜25日(日)まで、梅田HEP・HALLにて上演。
表現・さわやかのHP:http://h-sawayaka.com/

ペンギンプルペイルパイルズ『ゆらめき』吉祥寺シアター [2007年10月29日(月)]
 
ペンギンプルペイルパイルズとは、倉持裕さんという脚本家・演出家が手がける、ちょっとだけねじ曲がった世界が展開される不思議な世界を淡々と描く劇団です。
作家の倉持裕さんは、近頃、外部作品の脚本や演出も数多く手がけていたりして、注目を集めている方です。


今作は、女優の坂井真紀さんをゲストに迎えた作品で、舞台は集合住宅に住む、とある夫婦の家。
家の主は、同じ建物の1階で古着屋を営む夫・ススム(戸田昌宏)と、スタイリストの妻・ワタル(坂井真紀)。
そしてそこは、上階に住むトウコ(ぼくもとさきこ)と、ススムの友人で妻に逃げられたばかりのセンバ(玉置孝匡)のたまり場となっている。
ある日、仕事で一緒になったカメラマンのアシスタント・エジリ(近藤智行)から告白されたワタル。
単なる笑い話だったその一件を発端に、夫婦と彼らを取り巻く人々が、誤解と猜疑と嫉妬の渦に巻き込まれていく。

いつもはわりと淡々としたトーンで進む倉持さんの芝居ですが、今回はわりとテンポが早い会話劇、といった雰囲気。
まあ今回は、しゃべりすぎてしまう登場人物たちが、しゃべり過ぎてしまうがゆえに起こるストーリーですからね。
言葉の裏を誰もが読んで読んで読み過ぎて、まったくなかった出来事が、いつしかまるであったかのように変わっていく。
最初はそんなちょっとしたズレがおもしろくて笑って見ていたのに、次第に行き過ぎてしまってホラーの様相を呈してくる。

どこまでが本当にあったことで、どこまでが話している本人の妄想なのか、その境界線が曖昧で、観ているこちらも翻弄される。
現実っていうのも、同じように曖昧なのかもしれない。
「あったこと」を証明できる“もの”や“こと”がなければ、「なかったこと」にもなってしまい、その逆もまた真なり。
たとえそれが、妄想のなかであったとしても、その人にとっては間違いなく「あったこと」であるのだから。

そういうことって、毎日の生活の中でもなかっただろうか。
現実というのは、人の記憶にしか頼るところのない不安定なものだったりするのかもしれない。
いつもの作品よりももう少し現実に近い、というか、もしかしたら身近にもこういうことってあるのかも、って思わせるぶん、自分に引き寄せて観た。
ラストまで不安定なままで進行する物語の展開に目が離せない。

小林高鹿さん、ぼくもとさきこさん、玉置孝匡さんという、ペンギンメンバーが、この不安定なストーリーをより不安定にさせる不思議な存在感を醸し出していてよかった。
彼らのセリフの言い回し、立ち姿、目線、がなんだか不安を煽るんですよ。不思議に。
うーん、倉持さんの世界観もユニークだけど、それを上手に絵にしてくれる役者いてこそ、なんだなーと、納得。
でも、個人的には現実感からもっと離れた世界を描いているほうがスキなんですけど、ね。

東京公演は11月28日で終了。
11月2日(金)〜4日(日)まで、大阪市立芸術創造館にて上演。
ペンギンプルペイルパイルズのHP:http://www.penguinppp.com/

イキウメ『散歩する侵略者』青山円形劇場 [2007年09月16日(日)]
 
イキウメは、いま若手で注目を集める劇作家のひとり、前川知大さんが作演出する劇団です。
ここ数年、あちこちから面白いよ、との評判を聞き観に行ってみて大正解!
なかなかに、想像力を刺激するおもしろい作品でした。

夏祭りの夜から姿を消していた男・加瀬真治(安井順平)が3日後に保護されるが、性格が一変していた。
医者から脳の障害だと告げられた妻・鳴海(岩本幸子)は、別人のようになった夫に戸惑いながら、少しずつ心を開いていく。
じつは2人の関係は、真治の失踪前にすでに破綻していたのだった。
再び一緒に暮らし始めた2人は、新しい関係性を築けるようになっていた。
そんななか、鳴海の妹・明日美(前田晶子)が、姉妹という関係性の概念を失ってしまう病気にかかる。
そして、街には同じような症状を持つ患者が増え始め……。

設定といい展開といい、SFホラーの要素が満載。でも、間違いなくこれは愛の物語でした。
最初に「宇宙人」とか「UFO」なんて言葉がセリフの中に登場したときには、正直、引き気味だったのですが、じつはそれすらも計算されているという、非常に手の込んだ戯曲。

ネタバレしてしまうと、真治は地球で言うところの宇宙人で、真治の身体の中に入り込み、地球人の概念を収集しているという。
収集された人はその概念を失ってしまい、それが原因となって性格が一変したり、信念がねじ曲げられたりしてしまっていたのだ。
鳴海は、朧げながらに真治のその正体に気づき始め、一方でそんな真治に惹かれるようになっていった。
そしてまた、真治以外に2人の宇宙人がいることがわかる。
収集の任務が完了したら、地球から去ってしまうことを知った鳴海は……。

すごい。何がすごいって、この「概念が奪われる」という設定が。
そして、ある概念が失われた時どうなるのか、という展開が。
妹の明日美は姉妹という概念を、医者の車田(宇井タカシ)は自己と他者の概念を、右派だった青年は「所有」という概念を失う。
観ながら考えたのは、上記に挙げた概念を失ったとき、自分はどうなるのだろうということ。
普段、何気なく感じている物事、感情、それを概念という言葉に置きかえ、具体的なモノとして舞台で見せる。
この見えないモノを見せるテクニックにただただ感心。
戯曲はもちろんですが、役者も上手いな、と。自分だったら、どう演じていいのか皆目見当がつきませんので。

終盤の真治と鳴海が心を通わせるシーン。
いやあ、泣かせる。といっても、私は泣いてはいないんだけれど、かなりグッとこみ上げるものがありました。
ここまでまったく愛について語らずに、これだけ愛の深さを訴える舞台って、これまでにあったかな、と思ったら、前川さんのセンスに脱帽です。
ある意味、お芝居というよりは上質なSFミステリーを読んでいる雰囲気。
いやー、いい芝居というか、おもしろい作品でした。

現在上演中。9月16日(日)まで、青山円形劇場にて上演。
9月29日(土)・30日(日)は大阪・HEP HALLにて上演。
イキウメのHP:http://www.ikiume.jp/

ポツドール『人間・失格』三鷹芸術劇場 [2007年07月11日(水)]
 
岸田戯曲賞受賞から、飛躍的に動員を伸ばしているポツドール。
いつも、刺激的な作品を提供している劇団です。

今回は、とにかくダメな男の話。
田舎を離れて一人暮らししているけれど、バイトにも行かず、テレクラへの電話かテレビを漫然と観るかの、堕落した日々。
そんな彼は、1日にあらゆるところから金を請求されることになる。
最初は、テレクラの管理会社を語った電話の詐欺、しかもそれがさらにエスカレートしてゆく。
そして金を貸した友人から、冷徹な取り立て。
金なんてないくせに、断わることもできず、自分のメンツも捨てきれず、親に嘘をついて入金してもらうことしかしない男。

本当にダメなヤツの1日を淡々と、ダラダラとみせられ、あまりのダメさ加減にイライラ。
揚げ句の果てには、「つらい……」と別れた彼女に電話する始末。
きっと、こういう人って増えているんだろうな、とふと思ったりして。

(ここからネタバレ)
おもしろかったのは、時間の演出。
これまでって、多分時計を回して時間経過を見せるとか、窓から差し込む陽光で大まかな時間を表わしていたと思うけれど、それがテレビ、っていうのが現代。
朝は「はなまるマーケット」、昼は「笑っていいとも」っていう感じに。
でも、それで誰もが時間がわかってしまうっていうこと自体にも、ちょっとだけ恐ろしさを感じる。テレビが生活の基準になっている現代に対しての恐怖。

後半には、2つの展開が用意されていた。
このまま振り込め詐欺のいうまま金を払い、美人局の脅しに屈して金を払い、ただただ情けないままの展開。
そして、途中から詐欺に屈せずに反撃に出るという展開。
どっちが人間失格なのか、わからない。でも、「どっち?」って突きつけられているようだった。

相変わらず、後味の悪さはそのまま。
でも、セックス以外にも方法論を持っている作家なんだな、と実感。

プロフィール
プロフィール
望月リサ。ライター。女性誌やWebサイトでインタビューやカルチャー関連の記事を担当。締め切り間際でも観たい舞台は絶対にハズさないステージフリーク! 「ライブじゃなきゃ味わえないこと、いっぱいあります。ハマるとこんなにすばらしいものはないです。劇場にもっともっと足を運びましょっ。」
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