昼も夜も芝居づけ

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コンドルズ(近藤良平・振付演出)『大いなる幻影』さいたま芸術劇場 [2008年05月19日(月)]
 
今回、さいたま芸術劇場のPR誌と、当日会場で配布されたパンフを書かせていただいたこともあってどんな仕上がりになるのか楽しみにしておりました。
予想を裏切らない、というか、予想を裏切っての、というか、予想からまた大きく一歩前進していた公演でした。

いまさら、コンドルズについて説明も必要ないかと思いますが、彼らは学ラン姿で踊る男性ばかりのダンスカンパニー。
ダンス、ではあるけれど、コントがあったり、人形劇的なものがあったり、もはやダンスというより“ネタ”に近かったりします。
しかも、メンバーはダンサーだけでなく、大学講師だったりバーの店主だったり、外資系企業のサラリーマンだったり、とにかくバラエティ豊かな面々が集まった集団です。

冒頭、いつものようにCM風に作った映像で始まり、「踊ると思ったら大間違いですよ」と小さなピアノと近藤さん登場。
この時点から、まんまとコンドルズのペースに乗せられてしまった、といった感じ。
その後、舞台上のスクリーンに影が映し出されて始まるダンスはかっこよく幻想的でした。
いつもならばコント部分を引っ張る小林顕作さんが、劇団EXILEの公演に出演中とのことで、コントはいつもよりも少なめ(控え目?)でしたが、そのぶん、かなりダンスで遊びを入れていましたね。
橋爪さんのバレリーナになりきって踊るシーン、近藤さん、藤田さん、青田さんの猫になりきるシーン、どれも笑わせていただきました。

以前、近藤さんに取材をさせてもらった時に「みんなが踊れなくなっても、コンドルズは続けたい」というようなことをおっしゃっておりましたが、今回のさいたま公演は、そんな言葉を思い出させてくれた舞台でした。
というのも、いろんな意味で今後の可能性を示唆した構成になっていたこと。
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フィリップ・ジャンティ・カンパニー『Lands End 世界の涯て』 [2007年11月23日(金)]
 
キャホー! ワクワクした! 綺麗だった! 素晴らしかった!
幻想的で創造的で、驚きがたくさんあって、しかも美しい舞台。
ああ、こんな世界を舞台で観られるなんて、やっぱりジャンティは素晴らしい!

フィリップ・ジャンティ・カンパニーの舞台は、ベースはダンスだけれど、そこにお人形が登場したり、マジックを取り入れていたり、演劇的な部分も。
こう説明すると、聞いた人はみんな一様にポカンとした顔をするけれど、とにかくそうとしか説明ができないくらい、独創性のある作品を創っている訳です。

今回の作品は、手紙で始まる男女の物語がテーマとのこと。
冒頭部分、舞台の上にデスクが置かれ、そこに顔のない人の身体が座っている。
頭部分に最初、小さな人形の頭がすげられるが、しばらくすると紙に印刷された人の顔へとすげ替えられ、それがいつの間にか生身の人間となって手紙を書き始める。
ペンは、デスクの上に置かれた手の形のオブジェが持っている。
デスクの男がおもむろにペンをとり、手のオブジェを右から左へと移動させると、唐突に手が動き始める。

もう最初っから不思議の連続で、すっかり大興奮。
しかし、ジャンティの魔法はまだまだ始まったばかり。
トランクの中にしまい込まれてしまう男。紙に包まれ、姿を消す女。
羽音を立てて飛ぶ人面の虫は、まるで人間のように女性に絡みつき、舞台を覆う風船に呑み込まれた男は、いつの間にか姿を消している。
これが、映像だったら何てことないことなのかもしれないけれど、観客の目の前でリアルに展開されていくのだからすごい。
しかも、手品のように大仰な前フリもなく、ダンスをしているうちにいつの間にか起こる不思議な現象、というようにさり気なく、何気なく。
連続するイメージの姿が本当に幻想的で美しくて、現実の世界ながら夢を見ているような感覚。

とはいえ、ただただおっしゃれーな舞台を展開するだけじゃなく、ところどころにちょっとしたバカバカしさを織り交ぜているところがユニークでまた素敵。
人形の男女が抱き合い、キスを交わすと、女性の顔がはがれてそのまま男性の唇にくっついていってしまったり、女性の足がハサミに変わり、男性のものをチョン切ってしまったり。

とにかくいろんな仕掛けが満載で、飽きない1時間30分。
しかもすごいのが、カーテンコールに出てきた裏方さんはなんとたっった3人っきり。
いやー、こんなのどうやって3人でやってるんだ?
そんなことを含めて想像力がかき立てられちゃいます。

ああ、この舞台を言葉で説明するのって、本当に難しい。
とにかくだまされたと思って一度観て欲しい、としか言いようがない。
楽しくて驚きがいっぱいで、ワクワクする舞台に出合えることは間違いないので。

パルコ劇場での上演は12月2日(日)まで。
以降、12月4日(火)パルテノン多摩、12月5日(水)愛知厚生年金会館、12月7日(金)富山・オーバードホール、12月8日(土)・9日(日)大阪・梅田芸術劇場、11日(火)長崎市公会堂、13日(木)広島・アステルプラザ大ホールで上演。
うーん、あの舞台を別の劇場でやるとどうなるんだろうか、気になる……。

公演主催のパルコの公式HP:http://www.parco-play.com/web/play/genty/
ちなみに、YouTubeで「フィリップ・ジャンティ」を検索すると、ここでも今回の公演の一部が観られますよー。

インバル・ピント・カンパニー『ヒュドラ』さいたま芸術劇場 [2007年11月18日(日)]
 
インバル・ピント・カンパニーは、イスラエルを代表する舞踊団。
名前を聞いたことがない、という人も多いかもしれませんが、これまでに何度も日本で公演を行なっていて高い人気を誇っているカンパニー。
今回なんて、さいたま芸術劇場とちょっとアクセスしづらい劇場での公演だったのにも関わらず、前日チケットはほぼ完売状態というところからも、その人気は伺い知れる、かと。

ちなみに、インバル・ピントは人の名前なのですが、もともとグラフィックデザイナーで、そこからダンサーに転身しダンサーになったという変わった経歴の持ち主。
デザイナー出身らしく、彼女が作り上げる世界は、ビジュアル的なクオリティも高く、そこか人気の理由のひとつ。
ちなみに、以前に観た「ブービーズ」や「オイスター」では、不可思議な扮装をしたダンサーたちは、まるで絵本の中から抜け出てきたファンタジーの世界の住人達のようで、彼らが踊る姿は幻想的なおとぎ話のようでした。

そんなインバル・ピントですが、なんと今回は、まったく違う趣向でした。
凝ったセットや衣装ではなく、ほとんど装飾のないシンプルなビジュアル。
最初は正直、ちょっと残念な気持ちだったんですが、始まってみたらやはりというか、なるほどというか、やはりというか創造性の高い刺激的な舞台でありました。

作品としては、さまざまなイメージをつなぎ合わせたような形。
宮沢賢治をイメージベースにしているということでしたが、宮沢賢治の童話の世界ではなく、どちらかというと宮沢賢治の描く自然の姿をダンスという形で表現している印象を受けました。
大きく小さく寄せては返す波、びゅうびゅうと吹く風、その風になびく布、窓をつたって落ちる雨の滴……
シンプルではあるけれど美しい舞台でした。

作品の中には、1本の棒が登場するのですが、しなやかに動くダンサー達と真っ直ぐに延びた黒い棒がとの対比が、なにかすごく示唆的。
変わってゆくもの変わらないもの。なびくものなびかないもの。柔軟なもの硬質なもの。
ラストのシーンの上から落ちてくる綿毛が本当に美しくて素晴らしかった。

ダンスというと、なんだか物語もなければ、何を伝えたいのかもよくわからないと思う人は多いと思う。
でも、無理にわかろうとしなくてもいいのかも。
その場に身を委ね、目の前に広がる光景に湧き上がる想像力を遊ぶ、それでいいのかもしれないな、と。
とくに、インバルピントの世界は、たやすく想像の世界へと誘ってくれるキーワードをたくさんもっている。
そこに身を委ねれば委ねるほど心地いい、そんな舞台を見せてもらいました。

残念ながら、公演はすでに終了。次回の来日は、また2〜3年後になるんでしょうかね。
参考までに、公演を紹介していた、さいたま芸術劇場のHP
http://www.saf.or.jp/p_calendar/geijyutu/2007/d1109.html

黒田育世×室伏鴻『ミミ』赤坂RED/THEATER [2007年09月18日(火)]
 
黒田育世さんは、クラシックバレエ出身のコンテンポラリーダンサーで、現在はBATIKという女性のみのダンスカンパニーで活動されている女性。
黒田さんのダンスは、全身全霊をダンスに注ぎ込んでいるような激しくソウルフルなダンス。
黒田さんを評するのに「踊っていないと死んでしまうような人」だとかいう言葉が使われるように、まさにその存在自体がダンス、といった感じ。
ご本人は、わりと華奢でかわいらしい人なのだけれど、その身体を思い切り使って踊るものだから、なんだか痛々しくもあって、それが妙に心を捉えるんです。

そんな黒田さんが今回組んだのは、土方巽に師事し、大駱駝艦の旗揚げに関わるなど、舞踏の世界で活躍する方。
舞踏というのは、言葉ではダンスと同義なのだけれど、いわゆる舞踏はダンスのジャンルのひとつとして語られているものです。
あまり上手く説明できないのだけれど、跳躍したりリズムに乗って踊ったりするダンスとはちょっと違い、もっと地を這うというかうねるような動きをするのが舞踏。
身体をねじ曲げたり、小刻みに動いたり、もっと身体を不自然に動かす感じとでもいいましょうか。

そんな二人のコラボレーションは、何といおうかかなりアンダーグラウンドな匂い漂う不思議な舞台でした。

冒頭、白い少女のようなドレスで登場した黒田さん。衣装もかわいいけれど、髪を振り回して自在に踊る様子は、本当に無邪気な子供のようでもあり、踊る生き物のようでもあり。
暗転し登場してきた室伏さんは、大きな動きはほとんどなく、不自然な形に身体や腕を捻じり小刻みに身体を震わせ、まるで生まれたばかりの馬のようでもある。

長い髪を振り乱して跳んだり跳ねたり、駆け回ったりする黒田さんに対し、静のイメージの室伏さんは、どこか動きが異質で奇妙。
それでも途中、2人が向き合いはしゃぐような様子があったり、壁に激突した反動で床に倒れ込むという室伏さんの動きに呼応するように、黒田さんも同じ動きをしてみたり、とシンクロする部分も。
2人が共通しているのは、どちらも自らの体の限界点を超えたところにあるものを表現しようとしている感じ。
なぜにそんなに身体を痛めつけるのか、なぜそんな小さな動きひとつに全身の力を込めるのか。
このRED THEATERという空間の所為もあるのかもしれないけれど、どこか小さな空間に2人の生命力をぎゅっと押し込めようとしているような気がしました。
観ているこちらは、踊らずにはいられない、身体で表現する以外の言葉の伝達方法を知らない2人の必死の訴えを聞いているよう。
なんだか壮絶、といったほうがいいような、そんな2人の身体が印象的です。

ダンスって、物語があるわけでもないし言葉もないし、説明もない。
実際におもしろいのかおもしろくないのかも、正直よくわからないことが多い。
でも、ダンサーのパッションを感じて刺激を受けることはよくある。
上手に説明できないし、上手く自分の中で消化もできないけれど、今回の作品は、そういう意味で2人のパッションの激しさに揺さぶられている感覚がありました。

公演は残念ながら9月17日(日)で終了。
主催する魁文舎さんのHP:http://www.kaibunsha.net/index.html
近々、アーカイブのところから公演の内容はみられるはず。

近藤良平ダンスパフォーマンス「ひびのこづえの品品 たしひきのあんばい」水戸芸術館 [2007年08月19日(日)]
 
ひびのこづえさんは、野田秀樹さんの舞台や、中村勘三郎さんの歌舞伎「研辰の討たれ」などの衣装を手がけるコスチュームアーティスト。
そんなひびのさんの展覧会が、水戸芸術館で開催されております。

←水戸芸術館、いわゆるミトゲーは、現代アーティストを積極的に取り上げるなど、新しいアートの形を積極的に提案しようとしている美術館。アーティストとコンテンポラリーダンサーとのコラボレーションなども頻繁に行なっているなど、おもしろい催しをたくさん企画しております。




今回の展覧会のテーマは、ひびのさんが消費者という日常性とアーティストの立場での非日常性との間にある、プロダクトデザインとしてのアート。
数年前から静岡の下駄メーカーと共同で制作している木のスリッパから端を発し、いまひびのさんは、日常のなかで使う日用品のデザインにとても興味を持っているそうです。
日常のなかにあるもの(家具やタオル、バッグや絨毯など)にアートを取り入れることで、毎日の生活が少しだけ楽しくなる、そんな作品を創りたい、とひびのさんはおっしゃっています。
そうして出来上がった作品たちは、部屋を模した展示室にさりげなく置かれていたりして、なんだか遊びゴコロいっぱいの雑貨屋さんにやってきたような、ワクワクした気分にさせる展覧会です。

ひびのさんのインタビューは、9月7日発売の『BOAO』カルチャーページ内で書いておりますので、そちらをぜひに。
ただひと言、自然を慈しみ、毎日の何気ない暮らしを愛し、自分の創作の手助けをしてくれているさまざまな身の回りのモノたちをとても大事にされている方、だなというのが印象でした。
だからこそ、ああいうやさしくてキッチュなモノづくりができる人なんでしょうね。

で、初日のイベントとして行なわれたのが、いま飛ぶ鳥を落とす勢いのコンドルズ・近藤良平さんのダンスパフォーマンス。
今回、ひびのさんがこの企画に合わせて『NORTH FACE』というメーカーさんとコラボレーションで作られたウェア類が展示された一室で行われました。

登場は、綿のクロスの生地を使って作られたバスローブを羽織り、ヒノキのサンダルというひびのさんの作品を身に纏って。
おもむろにそれを脱ぎ捨てたかと思うと、天井から吊すように展示されたバッグや上着を外しては身に着けて踊ります。
ここに展示されている作品は、肩掛のバッグだけれど側面のジッパーをすべて開けると、パンツが飛び出したり、帽子なのだけれど、雨よけの肩掛が内側に内蔵されていたり(この説明、わからないかなぁ……ぜひ実物を!)というユニークなもの。
ただ展示として説明されているだけではわからなかったこの仕掛けが、近藤さんがひとつひとつ手に取って身に着けていくことで、わかりやすく伝わるという効果もあり、「へぇ〜」という感心の声があちこちから上がっておりました。
それらを脱いだり着たりする近藤さんは、興味深いオモチャを手にした少年のように楽しそうで、誰よりもこのユニークな仕掛けを遊んでいるようでした。

近藤さんのダンスはおそらく即興なのですが、ダンスという型にはまらず、もっと自由に楽しんで踊っている姿は、ひびのさんのアートと通じるものがありました。
アーティストとして高いところからモノを眺めるのではなく、もっと普通の目線と同じところにいながら、そのなかから生まれてくるおふたりの独自の解釈、おもしろがりかたは潔く、清々しくもあります。
ふたりとも、本当に好きで楽しんで創作活動をされているんだろうなぁ。
かといって、やりすぎず。それが“たしひきのあんばい”なんでしょうね。

ちなみに今回、披露された近藤さんのダンスは、会期中会場でビデオ上映されるそうです。
水戸までは、東京からJR特急で約1時間半。ちょっとした日帰り旅行気分でぜひ。
会期は、10月14日(日)まで。
HP:http://www.arttowermito.or.jp/kodue/koduej.html
ちなみに、9月23日には森山開次さんのダンスパフォーマンスもあり。
こちらも興味深いですー。

←ちなみに今回の展覧会のポスターは、なんとハンカチでできてました。このハンカチは、会場内のショップでも販売。あまりの可愛さに私も購入してしまいました。展覧会が終わっても、捨てられずに使える、ところがミソなんですね。

珍しいキノコ舞踊団「あなたの寝顔をなでてみる」吉祥寺シアター [2007年07月12日(木)]
 
今回のキノコは、いつものポップなテイストから少し変わって、ちょっとムーディな大人の雰囲気。
曲調も、ビッグバンド系のクラシックなジャズが多く使われてました。
舞台も最近は比較的、セットというか道具というか、を取り入れた作りになっていましたが、そういうものもなくほぼ素舞台のシンプルなもの。
左右の舞台袖にオレンジのカーテンと、床にすこしだけ装飾がされてはいましたが。

ダンスでとくに気になったのが、2人だけしか出てこなかった作品(わからないよね、そんなこといわれても)。
私のイメージでは2人はカップルで、片方のコはちょっとパートナーに冷たく接している。
でも、そのコは突然寝てしまうという難病をかかえていて、パートナーは冷たくされながらも、彼女の世話をしている。
彼女はどんなに冷たくあしらっても、自分を大切にしてくれる相手の存在が、ちょっと当たり前のように思い始めている。
というような感じのダンス。

なんかね、ちょっと色っぽいんですよ。
これまでの私のイメージのなかでのキノコは、少女っぽいというか、キャラクターっぽい中性的な雰囲気だったんだけれど、
それが、すごく女性的なんだよね。ちょっとエロいというか。
それがね、なんか新鮮だったし、ちょっと物語的で、こういうアプローチもあるのかな、と。

最後のカーテンコールもかわいかった。
観客の拍手にお辞儀しながら、いつしか体が踊ってる。
その、気づいたらカラダが踊ってた、という感覚がキノコの楽しさに通じているように思う。

プロフィール
プロフィール
望月リサ。ライター。女性誌やWebサイトでインタビューやカルチャー関連の記事を担当。締め切り間際でも観たい舞台は絶対にハズさないステージフリーク! 「ライブじゃなきゃ味わえないこと、いっぱいあります。ハマるとこんなにすばらしいものはないです。劇場にもっともっと足を運びましょっ。」
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